銀魂
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「お妙さぁぁ〜〜んっ!」
満面の笑みで走り寄ってくる近藤
それを見つめながら妙は重い、重過ぎる溜め息を吐き出した。
「お妙さんっ!好きですっっ!!」
しかし、そんな事は全く気にしていないかのように近藤が妙の前に立ち塞がる。
急激に頭が痛くなり、妙はこめかみを手で押さえつけた。
「これ、破亜限堕津です!受け取って下さい♪」
「………………………………」
「十個買って来ました!」
「………………………………」
「どうぞ♪」
「………………………………」
「お妙、さん…?」
手に持っていた白い袋を差し出しながらベラベラと話していたが、妙が何も反応しない事に違和感を覚えたのだろう。
近藤から顔を覗き込まれ、妙の柳眉が跳ね上がった。
「…糞ゴリラ……」
「なんですか?」
「一体何なんですか?」
「……ぇ…?」
「今日は朝から何度も何度も纏わりついてきてっっ!!」
明らかに妙から怒りのオーラが出ている。
けれど、
「お妙さんに逢いたかったんです♪」
「それだけじゃないでしょ?」
けれど、全く動じる事なく豪快に近藤が笑い出す。
そのせいで苛立ちが募ってゆく妙は、無意識に踵を鳴らしていた。
(来る度に綺麗な簪だの花束だの破亜限堕津だの持って来てっ!)
意味のわからない焦燥感が妙の胸を締め付ける。
知らず知らずの内に奥歯をぎしり、と噛み締めていた。
「それだけですよ?」
「……ぇ…」
「実は俺、今日誕生日なんです。それで、お妙さん逢って少しでも笑顔見ていたかったんです♪」
「………………………………」
「お妙さんの笑顔が俺の力の源だから…」
「………………………………」
「あはは!……なんちゃって♪」
邪気の全くない近藤の照れ笑いに、妙は困惑が隠せない。
笑い声が頭の中を綺麗に擦り抜けてゆく。
「だから色々品を貢ぎ物みたいに持って来たんですか…?」
「えっ…あ、まぁ……」
自身の声のはずなのに、他人の声みたいに聞こえて。
(この人、本当に莫迦じゃないの…?)
妙は呆然と近藤の顔を見つめることしか出来ない。
「お妙さん…?」
「っっ!なんですかっ?!」
「や、なんか固まってるから…大丈夫かなと思って……」
その為に再び詰められた間合い
間近に見る近藤の生真面目な瞳に堪えきれなくて。
(ち、近っ……!)
繰り出されたのは相変わらず綺麗な右ストレート
「近寄り過だっ!糞ゴリラッ!!」
「お゙、お゙だえ゙ざ……」
「今日また貢ぎ物持って来たら殴りますからね。でも、でも…ゴリラだけならお茶くらいいれてあげます」
「えっ?!」
そうして、いつもの如くさっさと踵を返す。
だが、その後に妙が残した言葉はいつもと全く違っていたのだった。
近藤さん!
お誕生日おめでとう!!
(近妙。うわぁっっ!間に合わなかった……
近藤さん一日遅れですがおめでとうございます!!
しかし、相変わらず意味不明ですね……)
初出し 2009-09-05 13:07
改訂 2012-09-01