銀魂
□寂
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ザワリ、ザワリ
風に誘われて樹々が揺れる。
「風…強いわね……」
乱れ続ける髪を妙は苛立たしげに右手で押さえた。
反動で桃色の巾着につけていた鈴がチリンと涼んだ音を響かせる。
「……フゥ…」
仕事終わりの妙はまだ夜が明けきらぬ路を一人、ゆっくり歩いているところであった。
思わず出てしまった溜め息は、仕事でいないのがわかっているにも関わらず自身のストーカーの気配がしないかと無意識に探ってしまったが為。
(いる事ではなくて…)
思わず苦笑が漏れる。
今、妙の脳内では『今日外せない仕事が入ってるので、タクシーで帰って下さいね?』と焦った表情で何度も念を押していた近藤がリプレイされていた。
別に付き合ってなどいないのだが、妙が帰る時危ないからと近藤はいつも側にいる。
というか、後をつけてくる。
(いない事が落ち着かないなんて……)
その近藤にどうしても抜けられないからと妙が何度もタクシー帰りを訴えられたのは昨日の日中の事。
歩けない距離でもないし、いつも歩いて帰っている為わざわざタクシーで帰る気はなかった。
まぁ、近藤がしつこく鬱陶しい為『煩い』と適当に殴り倒してはおいたのだが…
「…静かね……」
今になってらしくもなく近藤の言う通りタクシーで帰れば良かったかも…などという思考が浮かんだことに気付いた妙は自嘲の笑みをただ浮かべるのだった。
(妙。なんか風が強かったので……えぇ。ただそれだけです(←ぇ…)
相変わらず意味不明(笑))
初出し 2009-04-22 01:23