銀魂

□嫉
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「どうしてそんな事知ってるのかしら?このクソゴリラ」


近藤から齎された情報に妙はニッコリと微笑んだ。
だが、柔らかい空気は決してない。
それでも妙が自身の方を向いてくれた喜びに近藤の口元は緩む。


「九ちゃんの事…監視してるの?」
「してませんよ?」
「ならなんでっ!!」
「?」


思わず荒げた語調、頭を巡る゙九ちゃんの事好きみたいに何でもかんでも知ってるのよっっ!!゙という思考に妙は唇を噛み締める。
その目の前で悪びれもせず近藤は笑っていた。


「お妙さん可愛いですね」
「な?!」
「うん♪可愛い!」
「莫迦にしているんですか?」
「そんな事はないですよ!ただ…」
「ただ?」
「物事を楽しんでる顔の方がもっと可愛いです」
「っっ!」


邪気が全く感じられない瞳にギュッと胸が苦しくなって。妙は着物の襟を強く握り締める。
もやもやする感情を認めたくなくて近藤の顔から視線を外した。
吹抜ける風によって樹々のざわめきが嫌に大きく響く。


「お妙さん…?大丈夫ですか?」
「……大丈夫…」
「ですが「そんな事より!…そんな事よりなんでそんなに九ちゃんの事……」


何と言葉を繋げたら良いかわからない妙は、思わず口籠る。

(まるで嫉妬だわ…)

深くなる眉間の皺
表情を読まれたくなくて瞳を伏せる。
妙は弱い自分がほとほと嫌になった。


「東条殿からお伺いしたんですよ」
「……ぇ…?」
「この頃よくお会いするんです」
「…なんで……?」
「そりゃあ…お妙さんが一緒に買い物に行ったりしてるからでしょう」
「?」


そんな事には気付かずに沈黙の空間を近藤が破る。
当たり前のようにはっきりと言い切った近藤に妙は考え込んだ。

(東条さんと一緒に出かけたりなんかしてない、わよね…)

言われた言葉の意味がわからなくて…妙の脳内には疑問符が駆け巡る。

(なんで……ってまさかっっ!!)

今妙がよく一緒に買い物に行くのは九兵衛である。
東条は九兵衛に仕えている。
そして九兵衛のストーカー的存在でもある。


「まさか九ちゃんと私の後をつけて……」


総合してしまえば答えは呆気無く出た。
ニッコリと近藤が微笑む。


「違います」
「……え…?」


だが、否定されて目が丸くなる。
開いた口が塞がらない。


「私はお妙さんの後しかつけてません!」
「は?」
「柳生の若様の後はつけてませんよ?たまたま一緒にいらしただけで……」
「……………………………」
「そしたらその回数が多くなった為にいつの間にか近くにいた東条殿と仲良くなりました。柳生の若様の自慢をされまして…色々知識が増えましたよ」
「……………………………」
「あ、大丈夫ですよ?東条殿にお妙さんの自慢もちゃんとしときましたので♪」


そのまま近藤から繰り広げられる言葉を黙って聞いていたが、次第にフルフルと自身の身体が震えてゆくのを妙は感じていた。


「………………………ラ……」
「…え?お妙さん……?」


何か言われた気がして近藤は妙の顔を覗き込む。
と同時にニッコリと綺麗に微笑まれた。
近藤の顔が真っ赤に染まってゆくのは仕方がない事だといえよう。


「お、お妙さ「何やってんだ!コノクソゴリラァァァァッッ!!!!


緩んだ顔のまま全く警戒心もなく妙の側にいた近藤は妙から繰り出された拳に相変わらず綺麗に吹っ飛んだ。
だから…


「本当に…本当に莫迦なんだから……」


だから頭やら鼻やら様々な所から血を流して気絶した近藤は知らない。
妙が優しい眼差しと嬉しげな表情で自身を見つめていた事を
まだ寒さが残る季節だというのに妙の耳が紅く染まっていた事を
近藤が九兵衛を好きになったわけではない事を理解して安堵の溜め息を漏らした事を
近藤は全く知らない――…




















(近妙。嫉妬するお妙さんとお妙さんだけがターゲットの愛の狩人近藤さん話
相変わらず意味不明(笑))




初出し 2009-04-12 01:30
改訂  2012-08-28

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