捧げ物

□海と太陽と恋人達と
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恋人達の戯れ合いは時としてくだらぬ事件を引き起こす。

それが物事に疎い男女なら、更に問題を広げる事になるかも……しれない……




海と太陽と恋人達と



___________



「待てよ〜〜!」
「ふふふふ♪掴まえてごらんなさぁ〜い!」


緩やかに繰り返される海の満ち干きをバックミュージックに駆ける二人…。

眩い太陽は二人の愛を更にヒートアップさせ、足場が悪い砂浜は二人の走りを若干遅らせるがそれも二人の恋路を遮らない。
むしろその焦れったさが二人を余計に燃え上がらせている。



そんな今は失われた…というかされた事があったのかも不明な海での一コマを実践しようとする男女が四人………

そう…
言わずともしれた護廷十三隊四番隊副隊長虎徹勇音と六番隊副隊長阿散井恋次、九番隊副隊長檜佐木修兵、十三番隊所属の朽木ルキアである。

仕事では重責を担う彼らであるが、今日は揃って休日をもぎ取った初めての日であり、ダブルデートをする初めての日であり、それぞれ恋人としてデートするのも初めてといった初めて尽くしの日であった。

ワクワク、ドキドキ楽しむべきなのだ。
本来ならば……

にも関わらず、四人は重苦しい雲が立込めている暗く荒れてた現世の海の横手に集合していた。



「マジでするのか?」
「あの……恋人達が海に行ったら、必ずしなければならない……行為だそうです…」
「……………………」


恋次のいつもより若干低めの声音に怯えながら、勇音は口を開く。
修兵は無言のまま顔を強張らせていたが、ルキアは勇音の側でコクコクと頷いていた。


「乱菊殿に“でーと”では何をすれば良いか聞いたのだ」
「「………………………」」
「そうなんです…そしたら、側にいたネムさんが『この本の通りにしたら良いですよ』って“男女の嗜み百選”を貸して下さったんです」
「「………………………」」
「その中から、ネム殿お勧めの“海でランデブ―!〜私の心を掴まえて〜”を選んだのだ」
「「………………………」」


ルキアと勇音の説明に恋次と修兵は顔をひきつらせる。


「ネムさんもしたそうなんですが、これが一番良かったそうですし……」
「「っっっ?!」」
「ああ。楽しそうに話しておられた…!」
「「!!!!!!」」


修兵と恋次の顔色が一気に蒼褪める。

『『………したのか?マジで?!あの…!あの阿近さん……阿近さんがっっっ……?!爽やかに笑って白い歯を見せて…女性(=ネム)を……女性を追いかけたと…追いかけたというのか?!』』
二人揃って想像してしまい、あまりの恐ろしさに身震してしまう。


「だ、大丈夫ですか?顔色が……身体も震えて……」
「「心配ない心配ない…」」
「だが………」
「「心が恐怖を覚えただけだから……」」


あまりの顔色の悪さに勇音もルキアも戸惑い問掛けるが、修兵と恋次は二人から目を逸らしそれ以上踏み込ませはしなかった。




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