SD

□パラレル翔陽
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着ぐるみ(パラレル翔陽2)


「いい加減にしてくれないか?仙道執事」
「何を……ですか?」


額に青筋が出ているプリンス藤真の後ろで花形は青褪めた顔を不安げに歪めていた。

だが、仙道は気付いているはずなのにうさん臭い笑顔を貼り付けたまま動じない。


「『何を』だと…?お前何度目だと思ってんだ?!蛙の着ぐるみをしつこく送りつけてきやがってっっっ…!!!」
「っ!プ、プリンス藤真っ!言葉遣いに気をつけ「煩いっっ!花形!!!お前は黙ってろっ!!!!!」
「し、しかしっ!」
「しかしもへったくれもねぇんだよっ!!お前はあんな蛙の着ぐるみを何度も送りつけられてねぇから俺の気持ちわかんねぇんだっっ!!!」


暫く揉め出した二人を黙って見つめていたのだが、プリンス藤真の言葉に堪えきれなくなったのか、仙道は静かに口を開いた。


「『あんな』?そのようなおっしゃりようは少し酷いのではないですか?」
「あ゙?!」
「酷いのでは…と申上げたのです……」
「っっ?何だよ…」


瞳を軽く伏せ、哀しげに眉間に皺を寄せて口元を手で押さえる仙道は本気で傷ついているように見え、プリンス藤真は動揺して今までの勢いが嘘のように口籠ってしまう。


「今までのベンジャミン君は「ちょっと待てっ!何だ?『ベンジャミン』って!!」
「え…?ああっ!ベンジャミン君はお贈りした蛙の着ぐるみですよ♪あの有能な狩人、ウィリアム牧氏が着ぐるみを見て『ベンジャミン君可愛いねぇ』と言って下さったのでそのまま名前を拝借致しました♪」
「あの天然記念物がっ…!!脳内味噌じゃなくて絶対腐った華詰まってんな!!!」
「ちょっ…!プリンス藤真!!言い過ぎです!!!」
「本当の事だろうが……!」
「まぁまぁ…落ち着いて下さい。御二人とも……話、続けますよ?」
「ふんっ!勝手にしろ!!」


だが、ベンジャミンという名の登場にまたもや憤慨したプリンス藤真は声を荒げる。

それが端正な色白の顔、鋭く細められた瞳と相俟って般若みたいになり、いつも皆が恐れ慄く状態になっているのだが、流石は陵南国きっての有能な執事。
全く気にした様子も見せず、飄々とまた話を続行させた。


「あのベンジャミン君は我陵南国で皇族の衣装を全て手掛けている田岡衣服店のお針子の一人の丹精込めた手縫いなんですよ?」
「ケッ!お前の国も大した事ねぇな?あんな蛙の着ぐるみ作るようなお針子最低だっ!!」
「プリンス藤真言い過ぎです!」
「本当の事だろうがっ…ガタンッ!!
え……?」
「あ!」


しかし、急に響き渡った音の方向へ話を途切らせたプリンス藤真をはじめとする全員の視線が集中した。

そこにはフルフルと震えながら唇を噛み締める男が柱の後ろにいて……


「な、何だ?!」
「先刻お伝えしたベンジャミン君を作ったお針子の吉兆です」
「な゙っ?!お針子って普通女だろうがっ!!」
「おやおや…そんな男女差別今時流行ませんよ?一国の王子様のお言葉とは思えませんね」
「っっっ!ウルセェッ!!!」


プリンス藤真の表情は今までにないほど引きつった。

それを必死に取繕うとするけれど、こちらをジットリと見つめる吉兆にプリンス藤真の考えは上手くいかず……


「ああっ…可哀相な吉兆……」
「…グッ……」


仙道の涙まじりの呟きにプリンス藤真は唇を噛み締め、瞳を伏せることしか出来ない。

だから、側にいた花形しか気付かなかった。
気付けなかった。
仙道の口元がそれはそれは楽しげに緩んでいたのを――…


プリンス藤真はまた仙道に遊ばれたのであった。




(うきは様からネタ提供第二弾(笑)うきは様に捧げます(←要らねぇって…)
相変わらず意味不明だ(笑))



初出し 2008/11/07 02:04

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