SD
□短めの話のバトン抜粋
2ページ/2ページ
バトン抜粋〜湘北・海南Ver.〜
・嘘で塗り固められた
→顔。
「凄いね?女性は化粧でこんなに変わるんだ……」
「神っ!煩いっっっ!!」
「はいはい」
体育の水泳の為にとった化粧に同級生の神から突っ込まれて……
今の私はかなりブルー
溜め息が零れ落ちる。
だれだって好きな人にあんな風に言われたら凹むと思う。
「俺は可愛いくてこっちの方が好きかな…?」
「…はっ?!何言って……!!」
「さぁて……ねぇ…」
「な゙!」
だけど、笑顔でサラッと苛める彼は嫌いだ。
そう思いながらも顔に熱が集まってゆくのを私は止められそうになかった――…
・知らないフリをしてた
→彼を好きだという自分の気持ちに……
気付かないフリをしてた
「その結末がこれ…か……」
自分の莫迦さ加減に苦々しい気持ちが込み上げる。
目の前がだんだん暗く陰っていった。
「…痛いなぁ……」
糊がきいた白シャツの胸部を握り締めると、あっけなく深い皺が寄る。
その皺が徐々に、だが確実に濡れていくのを私は止められなかったし止めたいとも思わなかった。
「清田君の…莫迦……」
思わず零してしまった言葉を打ち消すように唇を噛み締める。
あぁ!違う。
そうじゃない…
莫迦で愚かなのは素直に本心が言えずに彼を傷つけてしまった自分自身
わかっていても彼に謝る事すら出来ない弱さ、未熟さを痛感し…制服を握り締める私の手は更に力を加わったのだった。
・絵本のような
→夢溢れる世界に憬れて……
何か違う事が起きないかと…いつもは通らない道をわざと歩いてゆく。
道に彩りを添える黄のタンポポや蒼紫のツユクサは綺麗で…柔らかく甘く薫る風が知らない世界へと誘う手助けをしてくれているみたいだ。
口元が緩んでゆくのが自分でわかる。
だが…向かい側から紅髪や金髪、リーゼントの明らかに不良と思われる集団が歩いて来るのが見えて、身体が竦んだ。
「ガハハ!天才だからなっ!!」
「あ〜はいはい」
「振られる天才!」
「自意識過剰の天才!天才!!」
「勉強出来ないけど天才天才♪」
「……お前らなぁっっ!!!!」
「「「「ははははははははは!!」」」」
けれどパッと見、そんな道には似つかわしくない不良軍団全員が何処か優しい顔立ちをしているみたいで、本当に夢の国に紛れ込んでしまった気がした。
一番大きな真っ赤な彼は太陽の化身で、リーゼントの彼は蜂の情報屋、黄色の彼はタンポポの精で髭の彼は土の精、眼鏡の彼は土竜………
きっとそうに違いない。
そう思うとなんだか楽しくて……
ニヤけた顔でずっと彼等の姿を見守っていた。
これが後に恋をする太陽の化身に初めて逢った忘れられない日……