SD

□短めの話のバトン抜粋
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・一緒に帰りましょう
→何処かに……


儚げに笑う少女を水戸は強引に自身へと引き寄せる。

それでも今にも消えそうなイメージが拭えなくて……
きつく、強く…抱き締める。


「何処に……何処に行くんだ?」
「さぁ…?何処か…よ……」


吹抜ける風に誘われて、少女の髪がフンワリと舞う。
少女の唇が困ったようにカーブを描く。

それはまるで破滅への序章のようで……
水戸は眉間に深い皺を寄せた。


「何処にも行くな……俺の…俺の側に…いろよ……」
「…いるでしょう……?ここに……」
「今だけじゃねぇ……ずっとだよ……」


水戸の強い眼差しに、少女は微かに笑いながら瞳を伏せる。


「…クスッ……まるでプロポーズみたい」
「悪いか?」
「…そうねぇ……寒いし…洋平で暖とるのも悪くない……かな?」
「なんだそりゃ……」
「え?だって、洋平の側は温かいから♪」
「それなら…暖がとれれば誰でもよいってことじゃねぇか……」
「身体の暖ならね?心の暖は洋平の側じゃないと無理だよ」
「……え…」
「ん?」
「……は?はぁっ?!


若干頬を膨らましていた水戸が驚きに瞳を見開いたのを少女は悪戯が成功した子供みたいな表情で見つめていた。

それに気付いた水戸は静かに苦笑を漏らすのだった。



バトン


・これまでとは違う
→態度

それは何が為…?


「水戸…君……?」
「………ごめん…な……?」
「…何が……?」
「ごめん」
「………………………………」


意味がわからないけれども深く探れないのは愛しい人の切ない漆黒の瞳のせい。
何も言えない。何も聞けない。


「っっ!」


でも、失いたくははなかったから……
私は強く抱き付いて離れないでいた。


(お願い…別れの言葉は言わないで……)



バトン


・淡い感情
→それは誰にも教えたくない恋心――…


「み、水戸君……?」
「ん?」


皆は不良だと怖がるけれど、話しかければ応えてくれる。
きちんと目を合わせてくれる。
そして、その瞳は穏やかに澄んでいて。酷く優しいのだ。
だから、


「えっと…その……」
「どーしたの?」
よっ、洋平君って呼んでも良い?!
「……ぇ…?」


だから、調子にのって少し、ほんの少しだけ勇気を出して近付いてみれば、


「やっ、あの、ちょっと名前を呼んでみたかったと言いますか何と言いますか…!ごっ、ごめんなさいぃぃっっっ!!」
「ククッ!何謝ってんの?別にそんなの気にしなくていーのに」
「……へ…?」


何がおかしかったのかはわからないが、笑われてしまった。
けれど、水戸君の眼差しも口調もとても柔らかくて。


「好きに呼んでくれて構わない。゙君゙も要らねぇーよ?」
「あっ!ありがとう!水戸君!!」


緊張の為に強張っていた私の身体からふっ、と力が抜ける。
不意に安堵した自身の顔が盛大に緩んでいるような気はしたが、私には直そうという気持ちが全く起きないのだった。



バトン
初纏め 2010/03/10 00:27

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