SD

□距離【連載もどき・未完】
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4話



「…ミッチー?」
「なんだよ!」


躊躇いがちにかけられた声に、三井は酷く苛立った。
またシュートを外したばかりなせいである。
今は試合中なのだが、いつベンチに戻されても文句は言えない状況だった。
救いは、練習試合であって公式なものではない事だろう。
自然と噛み締めていた奥歯が嫌な音を奏でた。


「いつまでボサッとしてんだ!走れ!!」


妙な空気を漂わせつつ見詰めてくる桜木が気に入らず、三井は力の限りに怒鳴る。
そうしていつもの癖で、バスケットゴール方向を見た。
今は誰もいなかったが、実はそこは彼女の定位置と言っても過言ではない。
何故いつもゴール付近にいるのか尋ねた時、゙まるで自分の為にシュートしてくれたみたいで嬉しいから゙と言いつつ笑っていたのだ。


「ミッチー?」
「だからなんだ?!」


思わず感傷に浸りかけたが、またこちらを窺うように呼び掛けられてはっとする。
哀れみを帯びた眼差しが癪に障った。
鋭い眼光で一度睨みつけてからボールを追って走り出す。
全く試合に集中出来そうになかったが、それでも諦めたくなかった。諦め、きれなかった。
試合に出続けて、どうしても勝ちたくて仕方がなかったのである。
自分の為ではなく、笑って応援してくれていた彼女の為に。


「負けられるかよ…」


未だ不調のままであるが、今日勝てたら素直に彼女の前に立てる気がした。
きっと自分が悪いのだからきちんと謝って話し合い、さっさと距離を縮めたくて堪らない。
故に一度深呼吸し、不調でコートから出されいように気を引き締めた。
と、何かが目の端に止まって。深く考えもせず口を開く。


「いつもの所にいろっ!」


ずっと心待ちにしていた姿を見つけたからだ。
夢にまで見た、愛おしい姿を。
三井は自然と浮かんだ歓喜の笑みを隠そうともせずに強い眼差しでゴールを、そして素直にゴール付近に移動してくれた彼女を見詰めた。




完璧ではないけれど
距離は確かに近付いて
それから、
それから――…

























(三井。珍しく続いている連載もどきですが、多分まだ続きます(←おぃ)
ん。相変わらず意味不明ですみません(汗))



初出し 2012/02/24 04:23

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