SD

□距離【連載もどき・未完】
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3話



「いつまでボサッとしてんだ!走れ!!」


自分に向けられたわけではないが、容赦ない怒鳴り声に思わず身体がビクッ、と震えた。
コートで試合中の声の主、三井がとても苛立っているようにも苦しんでるようにも感じられて。ドクドクと痛い程鼓動が早まってゆく。
周囲で同じく試合を見ていた人達が、゙自分がシュート外したくせに何様?゙゙能力ないんじゃねーの?゙などと好き勝手言っていたが上手な反論が出来なかった。
そもそも、今自分が反論しても喜んでくれはしないだろう。
人波に隠れて大人しく試合を見ている事しかきっと赦されないのだ。

(…何やってるの?)

本当なら大きな声で応援したい。
公式なものではなく練習試合だが、今の三井の様子は明らかに変なのだから。
感情をぶちまけた事で逢いづらくなり、離れていた二週間の間に一体何があったというのか?
わからなかった。わかりそうに、ない。

(寿…!)

自分から手を出して赦されるはずはないと猛省し、一週間近く傍らには寄らなかった。
それから今日までの一週間は堪えきれない寂しさと恋しさが募ってしまい、三井がいる教室や体育館の周りを行ったり来たり。
まるでストーカーのよう。
不意に可笑しな気分になって。気付けば苦笑が漏れていた。
いくら喚声が気になったとしても、いつも通り体育館の外から聞こえる物音で我慢すべきだったのだ、と今は思う。
もしかすると、いや、もしかしなくても、自分が見ているから調子が悪いのかもしれないと体育館から出ようとした瞬間に強い輝きを放つ漆黒の瞳と目が合った。
好きでいる普段の定位置、バスケットゴール付近ではなく人々の背後にいたのに、何かに誘われたかの如くこちらを向いた三井と目が合ったのだ。


「いつもの所にいろっ!」


驚きで固まっていると、聞き慣れた声が響く。
必死な、縋るような声だった。




近付きたくて、近付けなくて。
距離に苦悩していた日々
それが変わりそうな、
そんな気が、した――…

























(三井。いつまで続くのか、摩訶不思議な展開になってきましたが続きます。
えぇ。アップするのは当分先になりそうですが、実は三井サイドから書いてしまった為に確実に続きます。
ん。色々すみません(汗))



初出し 2012/01/24 00:45

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