SD

□距離【連載もどき・未完】
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2話



「チッ!」


盛大な舌打ちが、苛立たしげに汗に濡れた髪の毛を掻き上げている三井の口から零れた。
身体に張り付いたTシャツが鬱陶しくて堪らない。
胸倉を掴んで空気を送るかの如く、何度かばたばたと前に引っ張った。
得意なはずのスリーポイントシュートが全く入らないせいで、どんどん気分が低下してゆく。
昔ぐれて喧嘩していた時と同じくらい険しい表情を浮かべていた。


「なんで来ねぇーんだよ!」


原因はわかっている。
゙忙しい忙しいって忙しい病か!゙と意味がわからない事を言いながら顔を叩き、見事な蹴りを入れてきた彼女のせいだ。
叩かれた頬に爪跡もまだ残っている。


「あの莫迦!」


涙声で叫んで脱兎の如く走り去った彼女と同じ言葉を吐き捨てながら、三井はコートで地団駄を踏んだ。
苛立ちが拭えない。
最初は急に叩いて蹴ってきた事に対して、だったが今は一週間近く側に来ない事に対して怒っていて。そして、三井自身は認めていないが、悲しんでもいた。
肯定したくない事実が精神を蝕み、心の乱れがシュートを成功させない。


「意味わかんねぇ…!」


更に苛立ち、悪循環の完成だ。
今脳内を占めるのは、いつも笑顔で応援してくれていた愛しい人の笑顔と叩いた時の苦しそうな半泣き顔
相反する表情が三井の心を圧迫する。
重い溜め息を吐き出しながら持っていたボールを乱雑に強くバウンドさせると、さっさと踵を返した。


「ミッチー?何処行くんだ?」
「便所だよ!」


外に向かう足音は酷く荒い。
気持ちを鎮めようと噛み締めた奥歯がギシッ、と鳴った。
澄んだ青空が外に広がっていて。新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む。
まだ苦しいままだったが、少しは気が晴れたような気がした。




距離は未だ遠いまま…
だけども、
確かに何かが動き出そうとしていた























(三井。この間アップした話の続きですが、多分まだ続くと思われます。
相変わらず意味不明ですね…。ん。色々すみません(汗))



初出し 2011/12/26 00:52

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