SD

□距離【連載もどき・未完】
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1話



「忙しい忙しいって忙しい病か!」


思わず振り上げてしまった手は、寿の顔に見事にヒットした。
私の爪のせいだろう傷が一本頬に出来たが、ただそれだけでしかない。
全く揺らがない身体がとても悔しくて。切なくて。気が付けば蹴りまで入れていた。


「寿の莫迦!」


涙声で叫ぶ。心のままに。
深く考える事すらしなかった。する余裕がなかったと言うべきか。
脱兎の如く側から走り去る。
涙が次から次へと溢れきて止まらなかった。
ちゃんとわかっているはずだったのに。わかっていた、はずだったのに。
なのにどうしてこうなってしまったのか…


「莫迦莫迦莫迦!」


不良を止めてバスケ部に戻る時、今までのように逢える時間は少なくなるだろうと理解していたが、そんな事は気にせず頑張って欲しいと心から願っていた。
だからこそいつも笑顔で応援していたけれど、寿はいつ逢っても゙練習がある゙゙忙しい゙と言い、触れ合う時間が全く持てなくて。次第に寂しさが募っていったのである。
もう、限界だった。


「ば、かっ…!」


誰もいない場所まで来た事で張り詰めていた糸が切れたのか、立っていられなくなって。ずるずると建物の陰に座り込む。
乾いた大地に瞳から流れる水分を与え続けていた自分がおかしく、無意識のうちに自嘲の笑みが浮かんでいた。


「本当のばかは、わた、しっ…」


今でもバスケを頑張って欲しいとは思っている。
だが、触れ合う時間を得る為に頑張って欲しくないとも思っている。
矛盾する心が苦しくて。苦し過ぎて。堪らなかった。




そうして開いてゆく距離
近付くか、離れたままか
答えは……






























(三井。うひゃひゃ♪珍しく三井でシリアスっぽく攻めてみました。
ん。どうなるかは何とな無く決まっているので、多分続くと思われます。
曖昧ですみません…))



初出し 2011/11/28 05:39

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