企画
□ひかり
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キラキラ輝くひかりが周囲を明るく照らす。
キラキラキラキラ…
ひかり
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「修ちゃん、修ちゃん、あ〜〜んして。あ〜〜ん!!」
甘ったるい声がレストランに響き渡る。
「あ〜〜ん」
その声に従い『修ちゃん』と呼ばれた鋭い目付きで顔に傷があり、刺青もしているやばそうな男が素直に口を開いた。
その中へ女がお箸で何かをいれていく。
「美味し?」
「美味しいよ。君がいるからね、ハニ―♪」
みかけによらず甘い台詞を口にする。
「や〜〜ん、修ちゃんたら〜〜bb」
どっからどう見てもバカップル。
そんな光景をジッと見ている人物が一人……
何が『あ〜〜ん』だ!
キャラじゃねぇだろ!!!!
男のくせに馬鹿じゃねぇ?
心の中で思いっ切り毒づく。
自分が食べさせてもらった男よりもヤバイ顔、表情をしている事には気付いていない。
ガタンッッ!!
八つ当たりのように大きな音をたてて席を立ち、ビビっている店員にお金を渡してから店を出た。
夜風が冷たいが、心の怒り熱は冷めそうにない……。
クソッッッッ!!!
俺だって仕事さえなけりゃ今頃勇音とイチャイチャ出来たのにっ!!!
クリスマスに現世で仕事なんて〜〜!!
なんだか人や物、自分の周囲にある全てが俺を馬鹿にしている気がするっっっ!!!
なんて被害妄想が激しいこの男は泣く子も黙る九番隊副隊長檜佐木修兵である。
彼はイラついていた。
皆が幸せそうなこの時期に彼女に逢えずに一人仕事してることが悔しいのだ。
その悔しさを自棄食いではらそうとしたのに、あのバカップルに遭遇し、彼のイライラはさらに募っていく。
『修』だと?
よりにもよって俺と同じ名前かよ!!
ムカつくっ!!
クリスマスの為に飾り付けられた光が目にチカチカしてものすごく鬱陶しい。
ああ!!マジでグレちまおうか……!!!
遠い目をして考える。
クリスマスなんてクソくらえっ〜〜!!
「………兵…修兵!」
ああ、俺相当やばいな。
幻聴が……
「修兵ってば!!」
「ふぎゃっっ!」
現実から離れてかけていた意識を、肩に触れる柔らかい手と、耳に心地よい優しい声が引き戻した。
「勇…勇音!?」
「うん?」
修兵を現実に連れ戻したのは、恋人の虎徹勇音であった。
自分を呼び止めたのが今まで逢いたくて逢いたくて堪らない人物であった為、頭の中が真っ白になり上手く反応出来ない修兵を勇音は心配そうに見つめた。
「大丈夫?具合悪い?」
か、可愛い―――!!
心配そうに潤んだ瞳での上目づかいと、寒さのせいで紅く染まった頬…。
あまりの可愛いさにそのまま押し倒しそうになるが、ここが外であると思い出し、すんでのところでおしとどめる。
「……ただビックリして…。勇音が急に現れるから…」
正直に言うと勇音が少し俯きがちに答えた。
「…あ、あのね?
今日クリスマスでしょ?だから、修兵に逢いたくって……
卯ノ花隊長に無理を行って来ちゃった♪」
………………っ!!
ヤべェェッ!!!
照れて真っ赤になりながら笑う勇音が犯罪的に可愛いっっ!!!
外だろうが関係ねぇ!!
暴走しだした修兵が手を伸ばそうとするより早く、勇音は自分のこっぱずかしい発言を隠す為に周囲を見渡しながら歩き出した。
チッッッ!!少し遅かったか…!!
「…うわぁ♪ね、綺麗だね?この光!!!まるで夢の中にいるみたい♪」
綺麗なのは勇音だっ!
光の中で嬉しそうに話しながら微笑む勇音はとても綺麗で
まるで幻のようで…
だから強めに抱き締めた。
夢ではないと確かめる為に…
消えてしまわないように…
「……消えるなよ?」
「大丈夫!きっと今見えている光が消えてもここに…ここに宿ってるから……
修兵が忘れて手放さない限り大切なものはなくならないよ、きっと。」
俺の胸に手を当てながら優しく言う勇音は、さっきの主語が何なのか勘違いしていたが、それでもよかった。
「俺の努力次第か…」
苦笑しながら小さく呟き抱き締める腕をさらに強めた。
なら…
いなくならねぇように
消えてしまわねぇように
俺はいつもお前を守るから
大切にするから
だから消えんなよ?
お前は俺の人生を明るく照らし、幸せに暮らしていく為に必要不可欠な《ひかり》なんだから
一生側に…
側にいてくれ―――。
終
すみません!!ただ、冒頭部分のバカップルを書きたいが為だけに書き上げた作品です。
でも、自分の中で修兵も恋次もそんなことをしてよいキャラではない為、どっからともなく、修兵似の男を登場させました(汗)。
すみません…。
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