08/27の日記

04:16
願望(張汎視点
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恨めしい。
ああ、まったくもって恨めしい…。

いつもいつも厳めしい顔付きの遼(張遼)の頬を緩めさせるなんて、どうしたって私にはできない。私が寄って行ったら眉間の皺がさらに深くなるだけだ。
なのに…。

曇天の元、行軍する軍の中程を行く遼の隣には彼がいる。長く艶やかな黒髪を一つに高く結い上げて背に流している姿は確かに綺麗だなぁとは思う。
でも…でも、そいつは男なんだよな? どんなに綺麗な顔と髪してたって、男だったよな? 遼に抱かれてよがってたけど、確かに男だろ?

…。
何で男なんて好きになったかな。
兄ちゃん、お前には可愛い嫁さん見つけてたのに。あれは安産型だから遼似の可愛い子をたくさん産めたはずなのに。

『私には不要です』じゃないでしょー?
お前に今一番必要なのはお前似の可愛い子を産んでくれる可愛い嫁さんなのに。

私の視線の先では黒髪を揺らしながら遼の想い人、張儁乂殿(張コウ)が笑っている。
それを見遣る遼の頬も緩んでいる。
ああ、その表情。遼が家を出てから十数年、私には向けられていない微笑。
本当に嬉しそうに。本当に愛おしそうに儁乂殿を見つめるその眼差し。

…儁乂殿が女だったなら…。
そう思わずには…いられない…。

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