立海一家シリーズ
□立海一家とふしぎな虹
3ページ/3ページ
「ただいまぁ〜!!」
「赤也お帰りぃーー!!!!!」
待ちかねたように、皆はぞろぞろと赤也を迎えに出て来た。
幸村が一番に抱き上げ、柳はほっとした表情で赤也のくせ毛を撫でる。真田は其処に入りたそうな顔をしながらも、一歩引いて眺めている。
「凄いじゃねぇか赤也!本当に一人で行って来れたのかYO!」
「ちゃんと指定の物も買えていますね。お見事です!」
ジャッカルと柳生が赤也から袋を預かり、ブン太と雅治もそれを覗いた。
「なぁ、この缶へこんでね?」
「プリッ」
ブン太が取り出したココアの缶は、確かに側面が凹んでいる。
「あ…おれ、ころんだから…」
「え?転んだの!!?」
「大丈夫か赤也!?」
「あ、此処!膝を擦りむいてるよ!」
「痛かっただろう赤也。よく頑張ったな」
慌てて怪我を確認する幸村と柳。その様子を見て、真田が喝を入れた。
「こらお前達騒ぎ過ぎだぞ!転んで擦りむいた位で何だ!」
「だいじょうぶだよ!ちいさいやなぎさんと せいくんと さなださんにたすけてもらったからっ」
赤也がそう言うと、皆は一瞬にして静まり返った。集中した視線が、赤也は何を言っているのかと語りかけてくる。
「んとね、おみせでたら にじがみえて、おっかけてったら ころんで、いたかったけど ちいさいやなぎさんが たすけてくれたの!で、てぇつないでこうえんいって、あらってくれてね、そしたら ちいさいせいくんが ばんそーこくれて、こんどは せいくんとさなださんと てぇつないだ!」
赤也は一生懸命説明するが、大人達は信じられないといった表情だ。
「さなださん ちいさくても『たわけ!』だった。でも ふくろもってくれた!」
「へ〜?あかやもかぁ」
すると、突然ブン太が言った。
薄緑色のフーセンガムを膨らませている彼に、大人達が一斉に注目する。
「おれもまえに会ったことあったなぁ。ちっせぇジャッカル」
「なっ!?何言ってんだブン太!!?」
「おれも会ったことあるぜよ。ちっこいやぎゅうと」
「ほ…本当ですか雅治君!?」
雅治まで同じような事を言い出し、混乱する保護者達。
「幼稚園のときかなぁ?そーいやおれもあんとき、ひとりで虹見ながら歩いてたっけ」
「おれはここんちに来てすぐの頃じゃったかのう。たしかにあの日は虹がでてたナリ」
「夢かなって思ってたけど、まじだったのかな?」
「ピヨッ…おれはそっくりさんかと思ってたぜよ」
「ぶんたくんとまさくんも?!すげーっ!!」
赤也は興奮して、握っていた紐を手放しそうになった。
それで風船の存在を思い出し、ブン太と雅治に1つずつ渡す。
二人は嬉しそうに受け取った。
「虹に纏わる伝承はいくつかあるが、こんな話は聞いた事が無いな。そもそも虹は太陽の光が空気中の水滴によって屈折・反射される時に、水滴がプリズムの役割をする為、光が分解されて複数色の帯に見える大気光学現象なんだが…」
「赤也の言う、小さい幸村から貰ったという絆創膏は貼られていないが?」
「傷口も、血が出る程じゃねぇよな…」
「ええ。ですが、土などはついておらず清潔ではあります。洗ったのは確かではないかと」
「難しく考えたって、たぶん答えは出ないよ。信じてあげよう?赤也の話。ブン太や、雅治のこともね」
「理屈じゃない…という事か」
柳がそう締めくくり、皆は考察を終わらせた。
その日の夜、赤也が買って来たチョコレートとココアを使ったデビルズチョコケーキと、真っ白ふわふわなエンジェルフードケーキの2段重ねのバースデーケーキが出来上がった。
因みにこれは太一のレシピを参考にジャッカルとブン太が合作した品だ。幸村が育てていた苺も飾られている。
そう、今日は9月25日。赤也の誕生日だったのだ。
大きなケーキと大好きなお寿司、たくさんのプレゼントに囲まれ、赤也は瞳を輝かせた。
「赤也、誕生日おめでとう!!!!!!!」
初めてのひとりでのおつかい。いろんな事があったけれど、ちょっぴり成長した赤也なのだった。