立海一家シリーズ

□立海一家のちいさいお話
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小ネタ文(節分編)



【このみ幼稚園の豆まき】


幼稚園や保育園の子達の鬼が来た時の反応は『泣く』『固まる』『果敢に立ち向かう』の3パターンだそうです。
このみ幼稚園の子達はどうかな?

「ぎゃあああ!!おに こわい たすけてっ…うわぁあああ!こっち くんなっ こわいよお やなぎさんせいくんさなださーーーんっ!!!」

赤也くん、号泣。


「お、おに……こわくなんか…こわくなんか……ふちゅ〜〜…っ」

薫くん、恐怖で立ち尽くす。


「うわぁあああ まめっ!まめがぁー!!」

裕太くん、逃げ回り豆を零す。


「なに?まめ なげうの?なんで?おに?いたいの?」

リョーマくん、豆まきが理解できず。


「こしまえぇぇぇ!!はよ まめ ぶちゅけるんやぁーっ!!」

金ちゃん、超ウルトラグレートデリシャス金太郎豆嵐。(でもちょっと涙目)


「せやから俺等で鬼役やろ言うたんに……」

「だってさぁ、謙也先生足速すぎて、子ども達豆ぶつけらんないじゃん?」

「キヨ先生かてラッキーで豆当たらへんやん。千歳園長は才気煥発してまうしなぁ」

「でも、流石に本物の“鬼”さんは迫力が違うよね」


※鬼の正体は、福祉系任侠一家 鬼楓組組長の鬼十次郎さんでした。
節分の時期にはオニキ自ら鬼役のボランティアをしているそうです。



【立海一家の豆撒き】


「これより、豆撒きを始める!!お前達、準備は良いか!?」

「イエッサー!!!」

「鬼はァーー外!!福はァーー内っ!!」

本格的な裃姿の真田が、立海道場の主として、外や各部屋に豆を撒く。
それに倣い、赤也・ブン太・雅治も、手にした升から豆を撒いていった。

「おにはぁーそとっ!」

「ふくはぁー内ぃ!」

「プピナーッチョ!」

「雅治君それ違います」

立海一家のトップは幸村ではないかって?
実は立海家には、もう一つの豆まきがある。
子ども達が楽しみにしている、それは……。

「みんな、いくよー?鬼はぁー外!福はぁーー内っ!」

真田と色違いの袴姿の幸村が、二階から豆を撒く。
階下で待つ子ども達の上に、個包装された福豆と、スナックやマシュマロ、チョコやビスケットといった、色とりどりのお菓子が降って来た。

「ぶんたくん、それ おれの〜っ!!」

「早いもの勝ちだろぃ!」

「ピリーン」

二人が争う中、雅治が漁夫の利作戦でスナックを奪って行く。

「ああ〜まさくん!!?」

「まさ てめぇずりぃぞっ!!」

「お、おなじのそっちに落ちたぜよ」

「まじ?!ジャッカル頼んだ!」

「俺かよ!?…って、何処だ?」

「詐欺はダメですよ、雅治君」

「ピヨッ」

「今から3投目に赤也がキャッチする確率100%。赤也、少し下がろうか」

「へ…?やった!とれたぁ!」

「何してんだよジャッカル〜っ!」

「わかったって、次取ってやるから!」

「たわけぇー!!欲しい菓子は自分で掴まんか!動体視力と反射神経を鍛えるのだ!!」

バラバラバラ、と。たくさんのお菓子が降って来る。
皆それを夢中で掴もうとするが、やはり全てをキャッチ出来るわけもなく…。

「…プピッ!?」

「うわあ!?いたいいたいっ」

「ゆきむらくん、キャンディいたいって!」

「ごめんごめん。なんか飴系が固まってたみたいだ」

固いお菓子は頭に当たると痛い。
一つ勉強になった子ども達だった。



【おまけ。鬼楓組 ぎんなん横丁の節分】


立海一家が暮らす木の実の地には、現在ふたつの派閥が存在する。

福祉系任侠一家 鬼楓組。
オニキこと鬼十次郎を組長とし、若頭の徳川カズヤ、顧問弁護士に入江奏多を据え、児童養護施設“ぎんなん横丁”の運営等、地域に根差した任侠道を貫く組織だ。

芸能系任侠一家 鳳凰会。
お頭の平等院鳳凰自ら取締役を務める芸能プロダクション“鳳凰会プロ”は、人気タレント君島育斗・モデルの種ヶ島修二・大物芸人ナニワザリガニ等、様々な有名タレントを抱え活動する任侠組織。

互いにやり方は違えど、元々はどちらも三船連合の分家であり、木の実小・中学校の学区から西側半分が鬼楓組、木の実結小・中学校の学区から東側半分が鳳凰会のシマという暗黙の了解の下、領地分布している。

彼等は一見敵対しているように見えるが、それは己を高め競い合う為であり、外から縄張りを荒らされようものなら、共闘し木の実の地を護っている。

因みに、いつぞやの芥川慈郎誘拐事件の犯人達は、幸村と真田に制裁を加えられた後、鬼楓組で処分された。
だって警察に渡しちゃうと俺達が御礼出来ないじゃないですか――という幸村の言葉に、ウチの組に任せるつもりならもうちょっと手加減しなよ…と呆れながらも、入江が若い衆を引き連れ、シマの秩序を乱した愚か者達を引き取って行ったのだった。

そんな鬼楓組も、ぎんなん横丁で節分会をする。
他所では鬼役のボランティアをしている組長も、ぎんなん横丁では豆と一緒に、子ども達にお菓子やあみぐるみを撒く立場だった。

「いくぜっ!!鬼はァー外!福はァー内!!」

皆は広間に集まり、きゃっきゃとはしゃぎながらあみぐるみをキャッチしたり、お菓子を拾い集める。

「鬼は外…で、いいんですか?」

若頭になり、今年初めて豆を撒く立場になった、徳川が訊ねる。

「いいんだよ。俺達ゃ縄張り護るのが仕事だ。内に籠もってばかりじゃ何も出来ねぇ」

「…そうですね。この地を護る砦役、という事なら、確かに外だ」

鬼は外から皆を護る。それが鬼楓組だ。

「十次郎お兄さーん、若頭〜!こっちにもお願いしまーす」

皆より少し後方から、施設の院長 大和祐大が呼びかける。
彼の傍らには、綺麗なブロンドの小さな男の子が居た。
最近ぎんなん横丁に来たばかりの、リリアデント・クラウザーである。

「よしっ!受け取れや蔵兎座!!」

大和が英語で導くと、蔵兎座は両手を伸ばした。

降り注ぐ豆やお菓子の中、キャッチしたのはハムスターのあみぐるみ。ぎんなん横丁のマスコットキャラクター かえでちゃんだった。

「Oh…cute.」

困惑していた表情が和らいだのを見て、大和も徳川も安堵する。

その後、ぎんなん横丁に馴染み始めた蔵兎座は、あのこのみ幼稚園に通い始めるようになるのだが、それはまた別のお話。



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