立海一家シリーズ

□立海一家とゴンタクレ
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【金ちゃん来襲】


たまに喧嘩はするものの、このみ幼稚園の園児達はみんな良い子。お家の人がお迎えに来る頃には、すっかり仲直りしています。

「やなぎさ〜んっ!」

自身の姿を見つけるなり、駆け寄って来て抱きつく赤也を受け止め、柳はその頭を撫でた。

「赤也、今日も良い子にしていたか?」

「うんっ!」

しかし、そのくせっ毛には、今朝とは違うざらついた感触が。

「赤也、盛大に泥遊びをしたようだな。楽しかったか?」

「へっ?!なんでわかんの!?」

「ああーすみませ〜ん。薫くんとケンカして、泥だんごの投げっこしちゃって…」

ちょうど薫を迎えに乾も来た所で、キヨ先生が事の経緯を説明した。

「そうか。それは申し訳ない事をした。薫君、貞治、うちの赤也がすまないな」

「いや、うちの薫も同じ事をしたんだ。赤也君だけが悪いわけではないよ」

「かいどー、また あそぼうな〜」

「ふちゅ〜…また ひみちゅきち、つくろう」

「見ろ、蓮二。喧嘩といっても、いつもの事じゃないか」

「ああ、そうだな」

もう何のわだかまりも無い子ども達を見て、保護者達も微笑む。
すると、るーきー組からリョーマの手を引いた手塚が出て来た。

「忍足先生から聞いたが、リョーマも泥だんご投げに参加したようだ。寧ろ二人の喧嘩を煽るような事をしたらしい。すまなかった」

手塚はリョーマを謝らせようとするが、リョーマはそっぽを向いたまま。
リョーマ自身は面白そうなゲームに参加しただけであり、悪い事をしたとは思っていないのだ。

「リョーマ」

だが、手塚は許してはくれない。
リョーマはだんだん泣きそうになってきた。
そんな時、薫が言った。

「おまえ、けっこう つよいな。りょーまどらいぶ、すごかったぞ」

「まぁ おれたちのが つよいけどな。また あそんであげても いーぜっ」

続けて赤也も言い、にかっと笑う。
リョーマの涙は、あっという間に引っ込んだ。

「ま…まだまだだねっ」

そうは言ったが、リョーマの表情はとても嬉しそうだった。

「そういう事だ。手塚」

「これで良いのではないか?」

「…そうだな」

こうして、それぞれが家に帰る…筈だった。

「いややーっ!こしまえ かえらんといてぇーーっ!!」

「ちょっ…」

るーきー組から飛び出して来た金太郎が、リョーマに抱きついた。

「わい、わい まだ おむかえ こないねん!こしまえ わいと あそぼ!?まだ おってやぁーっ!!」

「こら金ちゃんっ!リョーマはもう帰るんや!困らせたらアカン!!」

「いーやーやっ!わい こしまえと おる!こしまえと あそぶんやーっ」

わんわん泣きながら、金太郎はリョーマに縋りつく。
体勢を崩しそうになるリョーマを、手塚が支えていた。

「すんません。白石…金太郎の保護者、仕事が長引いてもうて、まだ迎えに来られへんのです。せやから先生と遊んで待ってよなって云うたんですけど、やっぱり友達おらんと寂しいみたいで…」

謙也先生は金太郎を抱き上げ、リョーマから引き剥がす。だが金太郎は腕の中で暴れ続けた。

「なぁ金ちゃん、謙也先生と待ってようや?」

「いーやっ!」

「なんで謙也先生やとアカンの?」

「ケンヤは しらいしの ともだちやもん!わいの ともだちと ちゃうっ!」

「金ちゃん……」

「では、家に来るか?」

流石の謙也先生も悲しそうな顔をした時、そう言ったのは柳だった。

「家には赤也の他に子どもが二人居る。ブン太はあれで面倒見が良いし、雅治も上手くやるだろう。何より、赤也とは泥だんごをぶつけ合った仲だろう?友達ではないのか?」

「わい…にーちゃんのとこ、いってええん?」

金太郎はその大きな瞳で、柳と赤也を交互に見た。
ああ、と。柳はやわらかな声音で返す。

「いや、せやけど…」

「白石は精市の友人でもあるからな。困った時はお互い様だ。此方からも連絡はするが、一応先生からも御一報願いたい。白石が迎えに来るまで、金太郎は家で預かると。良いだろうか?」

「いく!わい にーちゃんち いくでぇーっ!」

すっかり笑顔を取り戻した金太郎。
謙也先生は暫く瞠目していたが、ぽん、と肩に手を置かれて振り返ると、キヨ先生が笑みを湛えて頷いており、抱えていた金太郎を解放してやった。

金太郎は真っ直ぐに赤也の元へ向かう。

「あかやの にーちゃん、よろしゅうよろしゅう!」

「しょーがないな。やなぎさんが ゆーなら つれてってやるっ」

「おおきに〜っ!」

嬉しそうに飛び跳ねる金太郎を見て、謙也先生は一度短く息を吐くと「よろしくお願いします」と頭を下げた。



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