立海一家シリーズ

□立海一家と御近所さん達
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【たのしいこのみ幼稚園】


「はーいみんな!お外で遊ぶでぇーっ!!」

「みんなで仲良く遊ぶんだよ〜!」

先生達の声に、園児達ははーいと返事をし、各々好きな遊びを始める。

「ケンヤー!わい おにごっこしたいっ!おにごっこ しよーやぁーー!!」

「よーし、ええで金ちゃん!やろか〜!」

「こしまえー!こしまえも やろー!」

「だから こしまえじゃないって ゆってうじゃん」

「わいは こしまえと おにごっこ したいでぇーっ!!」

「せや、リョーマも一緒に鬼ごっこしよ?なっ?」

「けんやせんせぇが そうゆーなら…いいよ」

「よっしゃ。謙也先生と鬼ごっこする人この指とぉーまれっ」

ワーキャーと園児達が謙也先生に群がった。

「ほな先生が鬼やでー!みんな捕まえたるからな〜っ」

そしてまたワーキャーと逃げ回る園児達。

そんな中、赤也は砂場で遊んでいた。

「かいどー!ひみちゅきち できたー?」

「あと もうすこしだ。ふちゅ〜」

それぞれ砂で大きな山を作り、トンネルを掘る。どうやらこれが秘密基地らしい。

「できた!おれの ひみちゅきち!これはなぁ“ぜったいおうじゃー”の きちなんだぜっ」

「おれのは“せいがくれんじゃー”の ひみちゅきちだっ」

「なにぃ!?でも おれの“ぜったいおうじゃー”のが つよいもんねっ」

「うそだ!“せいがくれんじゃー”のほうが つよいぞ!」

「ばかだなぁ、“ぜったいおうじゃー”は“りっかいせんたい”なんだぞ!さいきょう なんだっ!」

「おれの“せいがくれんじゃー”は“せいしゅんせんたい”だ!いちばん つよいに きまってるだろ!ふちゅ〜」

「“ぜったいおうじゃー”のが つよいもんっ!かいどーの ばーかっ!!」

そう言うと、赤也が薫の“ひみちゅきち”を蹴りつけた。

「ふちゅ〜…なにすんだ!」

これには薫も黙っていない。同じように、赤也の“ひみちゅきち”を踏みつける。

「うわぁぁぁぁっ!!?やめろよ なにすんだよぉー!おまえぇ…つぶしゅ!!」

赤也は目を赤く充血させ、文字通り薫の“ひみちゅきち”を踏み潰した。

「ふちゅ〜〜…っ!!おまえ もうゆるさないからなっ!!」

薫の反撃により、此方も無惨に崩れさった赤也の“ひみちゅきち”。
あとはお互い泣きわめきながら、泥だんごをぶつけ合った。

「ああ〜もう君達ぃ〜。何やってんのーケンカしちゃダメでしょ〜?」

それに気づいたのは清純先生(通称キヨ先生)。キヨ先生は泥だらけの二人を優しく宥めた。

「だって かいどーがぁ〜っ」

「きりはらが わるいんだろぉ!」

「はーいはい。どうしてケンカになったの〜?キヨ先生におしえてくれるかな?」

二人の頭を撫でながら、キヨ先生が訊ねる。

「だって、だってっ…かいどーが おれの ひみちゅきち こわしたから…っ」

「さ、さきに ひみちゅきち こわしたのは、きりはらです、せんせぇ…っ」

「ん〜?赤也くんは何で薫くんの秘密基地こわしちゃったの?」

「おれの、おれの“ぜったいおうじゃー”のが つよいのにっ…かいどーが、おれのが つよいってゆーからぁ…」

「ちがうっ!おれの“せいがくれんじゃー”のほうが ぜったい つよいんだっ」

「そんなことないもん!ふえぇえぇぇんっ!!」

「うわぁあぁぁんっ!!」

二人してキヨ先生に縋りつき、号泣する赤也と薫。
キヨ先生は二人の背中を撫でてやりつつ、それぞれの言い分にうんうんと頷いた。

「赤也くんの“絶対王者”も、薫くんの“青学レンジャー”も、どっちもとっても強いと思うよ。でもね?ヒーローっていうのは、大切な人達を守る為に、協力して闘うものなんだ。ヒーロー同士が争ってたら、悪いヤツが襲ってきても闘えないだろ〜?」

顔を上げた二人の瞳と交互に視線を合わせ、キヨ先生はにっこりと笑った。

「強いヒーローが協力しあったら、もっと強くなると思わない?赤也くんと薫くんが仲良くしてくれたら、みんなが幸せになれるんだけどなぁ?」

「みんなが…?」

「しあわせ…?」

「そう。たとえば、もし先生が悪いヤツに襲われてたら、二人は助けてくれる?」

「うん!キヨせんせぇ いじめる わるいやつは おれが つぶしてやる!」

「おれも!わるいやつが せんせぇ いじめたら ぶったおす!」

「うわあ…ちょ〜っと物騒かなぁ」

思わず苦笑したキヨ先生だったが、すぐに調子を取り戻し、続きの言葉を紡いだ。

「ならさ、二人で一緒に守ってくれない?その方がもっと強いじゃん。そうしたら先生、超ラッキー↑なんだけどな?」

赤也はちらりと薫を見た。
薫もまた、赤也を見やる。

暫く横目でお互いを窺っていたが、やがてほぼ同時に、キヨ先生を見上げた。

「おれ…いいよっ」

「いっしょに、せんせぇ たすけるっ」

「わあ〜ありがとっ!先生嬉しいな〜。じゃあ二人とも、仲直りしよっか?」

赤也は薫に向き直り、徐に口を開いた。

「…ごめんな」

「おれも、ごめん…」

「はーい、じゃあ仲直りの握手〜」

キヨ先生に促され、握手をする二人。
さぁて汚れたとこ洗おうね〜、と先生が声をかけようとした瞬間、並んだ二人の頬に泥だんごがぶつかった。

「うぅっ…」

「…ってぇ」

「え?な、何?!」

「あはははっ!どろあそび おもろいなー!わいも いれてやぁ?にーちゃんたちぃーっ!」

「あたった。どろあそび、たのしーじゃん」

「ああああっ!?何してんねん!金ちゃん、リョーマ!!そんなんぶつけたらアカーン!!」

「やって さっき にーちゃんたち やっとったでぇー?」

「どろだんご ぶちゅける ゲームなんでしょ?」

「ちゃうって!さっきんのはケンカ…ちょっ、コラッ!やめなさいっ!!」

「はははははっ!いっくでぇー!しゅーぱー うるとら ぐれーと きんたろーだんごや!」

「りょーまどらいぶ!」

謙也先生が急いで捕獲しようとするが、リョーマと金太郎はもう泥だんごを投げた後だった。
それらは驚異的なコントロールで、再び赤也と薫に命中。

「ああ〜っ、赤也くん薫くん!大丈夫?」

「きんたろう〜…っ」

「えちぜん…っ!」

片や悪魔のような、片や蛇のような眼が、金太郎とリョーマを睨み付ける。

「つぶしゅっ!」

「ふちゅ〜〜〜っ!」

そして二人は、“ひみちゅきち”の残骸で泥だんごを作り始めた。もちろん、反撃の為に。

「へっ?ちょっ…!?赤也くん薫くん!?」

「あっかやさーぶっ!!」

「かおーるしょっとっ!!」

「や、やめなさ〜〜〜いっ!!!!」

このみ幼稚園は今日も戦争です。




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