也
□赤也流あたため方法
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「はい、此処座って下さいっ」
有無を言わさぬ赤也が月乃を連れて来たのは、切原家のリビング。
「俺の部屋今汚いんスよ。此処で待ってて下さいね」
月乃をソファに座らせると、赤也はその場を離れた。
向かったのはキッチン。
部屋に入ってからすぐに赤也が入れた暖房が効き始め、だんだんと暖かい空気が漂う。
暫くすると、赤也は大きめのマグカップを二つ持って、月乃の側に立った。
片方を、月乃の前のテーブルに置く。
「どーぞ。先輩」
自慢げな笑みと共に差し出されたそれは…。
「ココア…?」
赤也は隣に座ると、自分のカップをテーブルに置いた。
「月乃先輩があったかくなるように、熱々っスよ!」
その笑顔を見た後、月乃はそっと、両手でカップを持ち上げた。
「ありがとう」
寒さで強張っていた頬が綻ぶ。
赤也はそれを見て満足げに口角を上げた。
「…おいしい」
「当然っスよ。俺が作ったんだから」
一口飲んだ後でそう告げれば、赤也は自信満々でそう言った。
作ったといっても、ココアパウダーと牛乳と砂糖を混ぜただけなのに。
そんな事を考えていたのが伝わったのか、赤也は一言付け加えた。
「俺の愛情たっぷりっス」
少し粉っぽかったのは言わないでおいた。
『俺があっためてあげるっス』
ココアの温度以上にあたためて貰ったのは、確かだったから。