□『Merry X'mas…from your Santa claus』
2ページ/7ページ




一体、どういう事なんだ?

あの人は俺が入部した頃からテニス部のマネージャーで、先輩達の話じゃ、俺はすげぇ懐いてて、だけど、俺は全然覚えてねぇ。

どうなってんだよ?こんな事あんのか?

これって、記憶喪失?

…でも、先輩達の事はちゃんと覚えてるぜ?
つーか、立海に入学した時の事も、そのずっと前も今までの事も全部覚えてる。
そんなわけねぇよ。

何で…?あのマネージャーの事だけ、全然わからない。

何一つ、覚えてない…。


『また寝坊したの?赤也』


あの口ぶり、あっちはやっぱ俺の事知ってんだろうな…。

俺の事『赤也』って呼んでたし。

けど…俺は……


『構わないわ』


でも、覚えてなくても構わないとか言ってたし、初めましてとか言われた。

あの人にとって俺は、そんなたいした存在じゃなかったって事か…?


俺はけっこう慕ってたらしいのに…先輩達の話じゃ…。



何か、悔しいぜ。覚えてねぇのに。





「切原君」

俺の思考を邪魔したのは、そのマネージャーの声だった。

「な、何スか?」

まだ慣れない会話。

当たり前だ。
俺にとっちゃ今朝初めて会った人なんだから。

「練習、集中できてないみたいね。朝練の時もそうだったし。私の事なら、気にしなくていいから」

「…けど」

「テニスをするのに、余計な事は考えなくていいの」



…あ、何かムカついた。

この人の事だけ覚えてないとか、悪い事してんのかなとかちょっと思ったりしてんのに、何だよそれ?

気にいらねぇ、この女…。


「アンタさぁ…うぜぇんだけど!」

よし、言ってやった。

「マネージャーとして世話焼きたいんだろうけど、ちょっと干渉し過ぎじゃないっスか?部活の事はまだしも、今朝の格ゲーの事とか、アンタに言われる筋合い無いし。アンタ俺の姉貴か母親のつもりでいんの?偉そうに先輩ヅラして保護者気取ってんじゃねーよ」

心地良い優越感。

だけど俺は見てしまった。

マネージャーの、悲しそうな瞳。

「な…何スかその顔。俺が悪者みたいだからやめてくれません…?」

「ごめんなさい。私…そんなに変な表情してる…?」

「いや…」

おかしい…寧ろ無表情なのに。
さっきのは、俺の見間違いだったのか?

「赤也…」

「気安く呼ぶな!」

おかしい…何だこれ…?

さっきから俺の中の何かがおかしい。

それが、名前を呼ばれた瞬間、痛みにも似た感覚に変わった。

何だよこれ…俺は……

「俺…もう帰るっス」

此処にいたくない。

「切原君…」

「お疲れっした!!」

俺はコートを飛び出していた。

痛ぇ…いろんなトコが…。

「クソッ!!」



何で俺がこんな思いしなきゃなんねぇんだよ!!






次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ