□甘やかし
2ページ/4ページ




「先輩、俺肉食いたいっス!」

「食べればいいじゃない」

「あー、あとこれも…これもいいな」

帰り道、月乃は赤也を近くのファミレスに連れて来た。

メニューを選びながら、赤也の目はだんだんと輝きを取り戻していった。

「よし、決めたっス!」

赤也は喜々として呼び出しボタンを押した。

注文を取りに来た店員に、メニューを見せながら、料理の写真を指差していく。

勢いよく赤也が注文した後で、月乃は淡々と注文を終えた。

「俺ドリンクバー行ってくるっスね!」

「いってらっしゃい」

喉も渇いていたのか、赤也の前のグラスには、氷しか残っていなかった。


「ただいまっス!」

戻って来た赤也の手には、二つのグラス。

「?」

「月乃先輩、アイスティーでいいんスよね?」

無邪気な顔をして、月乃の前にグラスを置く。

まさか自分の分まで持ってきてくれるとは思わなかった為、一瞬反応が遅れた。

「あ…ありがとう」

「変なモンとか入れてないから、大丈夫っスよ?」

一瞬の戸惑いを読み取ったのか、赤也はそう言った。

“変なモン”とは、ガムシロップやミルクの事ではないだろう。

赤也のグラスを見ると、何か複雑な色をしていた。

「赤也…それ、何?」

「メロンソーダと、コーラっス!」

そう言った赤也は、自慢げだった。

「もしかして、混ぜた?」

「けっこう美味いっスよ?月乃先輩も飲んでみます?」

赤也は純粋に薦めてきたが、月乃は遠慮しておいた。

「この前やったコーヒーとオレンジジュースは微妙だったんスよねー。全部ジャッカル先輩に飲んで貰ったけど」

それを聞き、赤也のさっきの言葉の意味がわかった。と同時に、ジャッカルに同情した。

「真田副部長の緑茶にメロンソーダ混ぜた時はめちゃくちゃ怒られたっけ。色的にバレないと思ったんだけどなぁ…」

「炭酸なんて入れたらバレるに決まってるじゃない。それ以前に、そんな悪戯しないの」

「最初にやり始めたの仁王先輩っスよ?丸井先輩もやってたし、幸村部長だって楽しそうに見てたっス」

思わず、溜め息が漏れた。

今まで被害に遭わなかったのが不思議だ。





次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ