立海一家シリーズ

□立海一家と御近所さん達 参
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【あくまでてんしなんです。】


「赤也、誕生日おめでとう!」

幸村の声に続き、皆が「おめでとう!!!」とグラスを掲げる。

「へへっ、ありがとうっす!」

誕生日を迎えた赤也は、にこにこ笑顔で礼を云った。

海鮮焼肉 錦≠ナの、赤也のバースデー焼肉パーティー。
いつもの和室のテーブルには、お決まりの神の子のフルコース、王者のフルコース、そして子ども達の為のお子様メニューの他に、スペシャル肉ケーキも鎮座していた。

赤也はいつも以上に焼肉をたらふく食べ、ご機嫌だ。

「ねぇ!おれ、もう おうまさん のれるんでしょ!?」

「そうだなぁ、赤也ももう年長さんだし。乗馬体験、連れてってあげようか」

「やったー!!」

「お、これで赤也も乗馬デビューだな」

ジャッカルがよく行く乗馬クラブは、年齢制限があった。
ブン太と雅治は本物の馬に乗った事があるのに、自分だけ乗った事がない赤也は、この時を楽しみにしていた。

「早速、赤也の乗馬服を用意せねばならんな!」

「大丈夫だ、弦一郎。既に一式揃えてある」

「さっすがやなぎさん!!」

「はじめましての馬には、前と後ろ逆にのるんじゃ。前へバックして一人前ナリ」

「え〜っ!?」

「そんなムズかしい事、できるわけないだろぃ」

「普通に前を向いて乗っていいんですよ、赤也君」


粗方食べ終わる頃、襖が開き、錦が入って来た。

「赤也、誕生日おめでとうな」

「わあ、すっげぇ〜!!」

誕生日特典の、花火がささったアイスケーキだ。
それを運ぶ彼の後ろから、赤也と同じくらいの年頃の男の子がとことこ付いて来て、穏やかな笑みをたたえ、プレゼントを差し出した。

「おめでとう。おみせからのプレゼントです!」

「あ、ありがと……?」

きょとんとしながらも、受け取る赤也。

「えらいなぁ、よしお君。お手伝いかい?」

幸村が微笑みかけると、よしおと呼ばれた男の子は、「はい!」と嬉しそうに返事をする。

「だれっすかこいつ?」

「玉川よしお。錦先輩のとこの子だよ。焼肉食べに来ると、時々お手伝いしてるだろう?」

「今年度うちに入った門下生だぞ。初日に自己紹介したではないか!」

「幼稚園も一緒だろう。同じれぎゅらー組だ」
※進級しました。

「えー!?しらないっす!!」

幸村・真田・柳が次々に答えるが、赤也には覚えがない。

「よしおはおとなしいし、目立たないからな…」

複雑そうに笑い、錦はアイスケーキを切り分け、子ども達に配っていく。

「よしおは筋が良いですよ。稽古も真面目にやるし、何より礼儀正しい!」

「我々の言う事をよく聞き、年長者の足を引っ張らないようにと、誠実に取り組んでいます」

「真田、柳……!よかったな、よしお!師範と師範代に褒められたぞ」

「そんな……ありがとうございます」

照れ臭そうにしながらも、ぺこりと頭を下げるよしお。

そんな姿を、赤也は思わず睨んでいた。

「自分より小さい子にも親切だよな。道場で金太郎を預かる時とか、気が付いたらよしおに懐いてて」

「金太郎君は元気が良すぎてよく擦り傷を作ったりするので、心配して私の所に連れて来てくれた事もありますね。優しい子です」

ジャッカルや柳生までもが、よしおを褒める。

とどめに幸村が「本当、いい子だよね」とよしおの頭を撫でたので、赤也はショックを受けた。

「なぁ〜、もうデザート食ってええ?とけちまうだろぃ!」

「これいじょう待たせると、とける前にブン太がぜんぶ食っちまうぜよ」

「ダ、ダメだよ ぶんたくん!これは、おれの たんじょうびのなんだから!!」

しかし、その時はアイスケーキに気持ちが移り、おいしく平らげた。




貰ったプレゼントは、しゃぼん玉セットだった。
帰宅後に開けてみた赤也は、唇を尖らせる。

錦先輩のお店からのプレゼント≠ヘ、素直に嬉しい。
けれど、渡したのはあの男の子だ。

保護者達みんなが褒めていた、あの……。

「まさくん、しゃぼんだま やって!」

その上、赤也はしゃぼん玉を吹くのが苦手だった。
つい強く吹いてしまうのか、上手く泡が作れない。

「プリッ……しょうがないのう。あかやは下手じゃき」

雅治もブン太もしゃぼん玉は上手だが、よく遊んでいるのは雅治の方だった。
なので、赤也は彼に渡した。

「えい!やあ!」

「にゃんす〜」

縁側に座り、しい太を膝に乗せた雅治が吹くしゃぼん玉を、庭にいる赤也が片っ端から割っていく。

「あんなやつ、しらないもん!」

雅治は構わず、しゃぼん玉を吹き続けた。

「なんで、みんな、あいつのことばっか ほめるの!?おれの たんじょうびなのに!」

「あ〜あ、ゴキゲンななめだぜぃ」

ブン太はフーセンガムを膨らませながら、面白そうにその光景を眺めていた。

「あかやはポポピャーマじゃのう」

「ポポ……なに?」

「『お子ちゃま』だってさ」

「そうだよ?おれ、こどもっす!」

赤也は、「あかやばーすと!」と新しい必殺技名を叫びながら、しゃぼん玉を全て割ってしまった。

「おれのほうが つよいんだからな!たまお≠ネんかに まけねー!!」

「誰だよ、たまお」

「プピーナ」

悪魔のように不機嫌全開な赤也だったが、保護者達はむくれている姿がかわいいとこっそり見守っていた。

そして、夕食時には大きなケーキと大好きなお寿司、たくさんのプレゼントに囲まれ、天使の笑みを浮かべる赤也なのだった。




 

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