□夜のおつかい
1ページ/3ページ




「クソォ、姉貴のヤツ…」

夜。

俺は今コンビニに向かっている。

「ちょっと赤也、カフェラテ買ってきてよ。冷たいの」と姉貴に言われて。

「んだよ自分で行けよ」っつったら、「こんなか弱いお姉様に夜の外を出歩かせる気?アンタ行ってきなさいよ」ときたもんだ。

何処がか弱いんだよ凶暴なくせに。

だいたい、可愛い弟を夜に外へ放り出すなんて、姉貴のする事じゃねぇだろ。

せっかく格ゲーやってたのに…ふざけんなよチクショウ。

そんな事を思いながらも、コンビニで言われた物を買い、そーいや今週のジャンプまだ読んでなかったな…と、ついでに立ち読みしていた時だった。

「赤也?」

まさかこんな時間にこんなトコでその声を聞くとは思わなくて、俺は読んでいた雑誌をぞんざいに手放し、顔を向けた。

「月乃先輩!?」

俺が月乃先輩の声を聞き間違える事は絶対無い。
けど、品行方正な月乃先輩が夜のコンビニにいるなんて、顔を見るまで信じられなかった。

「何してるの?こんな時間に」

「俺は姉貴に買い物頼まれて…ってそれはこっちの台詞っスよ!先輩こそこんな時間に何してんスか?」

「私は塾の帰りなんだけど、通りかかったら、外から赤也が見えたから」

「それで声かけてくれたんスかっ?」

嬉しくてテンションが高くなる俺に対して、月乃先輩は冷静な瞳で俺の持っているコンビニ袋を見た後、言った。

「買い物は終わったんでしょう?もう遅いから、早く帰りなさい」

「わ、わかってるっスよぉ…」

がくん、とさっきまでのテンションが一気に下がっていく。

俺を見つけて会いに来てくれたワケじゃなくて、説教しにきたのかこのひとは。

……でも、それでも俺は――。

「でもっ、俺より月乃先輩の方が危ないっスよね?俺、月乃先輩ん家まで送っていくっス!」

「え?でも、それお姉さんに頼まれた物でしょ?早く持って帰ってあげなきゃ…」

「いいんスよ!月乃先輩一人で帰した方が余計怒られますって」

半ば強引に、月乃先輩を連れてコンビニを出る。

「へへっ」

何で俺がパシリなんてとムカついてたけど、おかげで月乃先輩に会えたんだから、姉貴に感謝してやってもいいかな…。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ