也
□夜のおつかい
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「クソォ、姉貴のヤツ…」
夜。
俺は今コンビニに向かっている。
「ちょっと赤也、カフェラテ買ってきてよ。冷たいの」と姉貴に言われて。
「んだよ自分で行けよ」っつったら、「こんなか弱いお姉様に夜の外を出歩かせる気?アンタ行ってきなさいよ」ときたもんだ。
何処がか弱いんだよ凶暴なくせに。
だいたい、可愛い弟を夜に外へ放り出すなんて、姉貴のする事じゃねぇだろ。
せっかく格ゲーやってたのに…ふざけんなよチクショウ。
そんな事を思いながらも、コンビニで言われた物を買い、そーいや今週のジャンプまだ読んでなかったな…と、ついでに立ち読みしていた時だった。
「赤也?」
まさかこんな時間にこんなトコでその声を聞くとは思わなくて、俺は読んでいた雑誌をぞんざいに手放し、顔を向けた。
「月乃先輩!?」
俺が月乃先輩の声を聞き間違える事は絶対無い。
けど、品行方正な月乃先輩が夜のコンビニにいるなんて、顔を見るまで信じられなかった。
「何してるの?こんな時間に」
「俺は姉貴に買い物頼まれて…ってそれはこっちの台詞っスよ!先輩こそこんな時間に何してんスか?」
「私は塾の帰りなんだけど、通りかかったら、外から赤也が見えたから」
「それで声かけてくれたんスかっ?」
嬉しくてテンションが高くなる俺に対して、月乃先輩は冷静な瞳で俺の持っているコンビニ袋を見た後、言った。
「買い物は終わったんでしょう?もう遅いから、早く帰りなさい」
「わ、わかってるっスよぉ…」
がくん、とさっきまでのテンションが一気に下がっていく。
俺を見つけて会いに来てくれたワケじゃなくて、説教しにきたのかこのひとは。
……でも、それでも俺は――。
「でもっ、俺より月乃先輩の方が危ないっスよね?俺、月乃先輩ん家まで送っていくっス!」
「え?でも、それお姉さんに頼まれた物でしょ?早く持って帰ってあげなきゃ…」
「いいんスよ!月乃先輩一人で帰した方が余計怒られますって」
半ば強引に、月乃先輩を連れてコンビニを出る。
「へへっ」
何で俺がパシリなんてとムカついてたけど、おかげで月乃先輩に会えたんだから、姉貴に感謝してやってもいいかな…。