也
□仲直りのしるし
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その日、俺は凄ぇイライラしていた。
原因はいろいろある。
放課後の練習中もそのイライラは消えなくて、それどころかますます募っていった。
休憩中に、月乃先輩が浦山と話していたんだ。
「マネージャーさん、コレどうぞでヤンス」
「え…どうしたの?これ」
「ペットボトルに付いてたオマケでヤンス。よかったら使って下さいでヤンス〜」
浦山が月乃先輩に渡してたのは、女子がよく髪を結ぶのに使うヤツで、たしかシュシュとかそんな名前のヤツ。
ウチの姉貴もたまに使ってる。
浦山にしたら、自分は使わないから、たまたまそこにいた(部活中だから当たり前なんだけど)女子である月乃先輩にあげただけで、他意は無いのかもしれない。
「似合っててかわいいでヤンス〜」
けど、今日の俺は不機嫌だったから…。
「クソッ!!」
その後の試合型式の練習、打ち返された打球にあと少しラケットが届かず、俺は思いきりネットを蹴り上げた。
「赤也」
幸村部長の静かな声が、突き刺すように響いた。
反論出来ず、思わず舌を打った。
重たい雰囲気。
そんな中、コートに入って来たのは、月乃先輩だった。
「赤也」
「…」
黙ったまま睨んでいると、右手からラケットを奪われた。
「来て」
促され、俺はコートを出た。