□『Merry X'mas…from your Santa claus』
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「やっべぇ!遅刻遅刻!!」

俺は急いで部室に向かっていた。

「うぃっース!」

勢い良く扉を開けると、そこには着替えも済んで部活の準備万端の先輩達。

俺も早く着替えねぇと、真田副部長に怒られる。

自分のロッカーに手をかけようとした時、

「また寝坊したの?赤也」

扉の方から女の声が聞こえた。

「昨日、また遅くまでゲームしてたんでしょう?朝練に間に合わないなら程々にしなさいっていつも言って」
「アンタ…誰っスか?」

その女は、とても驚いた目をしていた。

「赤也?何を言っているんだ?」

幸村部長が言った。

「幸村部長の知り合いっスか?」

「な…っ」

「…?」

幸村部長だけじゃなく、先輩達全員の様子がおかしい。

一体何だってんだ…?

「馬鹿な事を言うな、赤也。香宮は我々テニス部のマネージャーではないか」

今度は真田副部長が言った。

相変わらず声が低くて怖ぇけど、何か動揺してるのがわかった。

「マネージャー?この人が?」

「赤也…お前、香宮の事がわからないのか?」

「わからないっつか、俺今日この人と初めて会ったんスよ?柳先輩」

「たわけ!!」

柳先輩との会話を真田副部長が遮る。
何で怒ってんだよ、真田副部長…?

「何をふざけた事を言っておるのだ赤也!お前は一年の頃から世話になっているではないか!!」

「へっ…!?」

一年の頃からって…嘘だろ?

だって俺はこんな人知らない。

「おい、どうしちまったんだよ赤也」

丸井先輩が会話に入ってきた。

「お前あんなに香宮に懐いてただろぃ?」

「は?俺が?」

「そうだぞ赤也。俺達が香宮と二人で会話しようもんなら、お前必ず睨んできたじゃねぇか」

「ちょっ…何スかそれ!?」

「切原君は特に、香宮さんを頼っていましたよ」

「は?え!?」

ジャッカル先輩や柳生先輩の言葉にも、どうしたらいいかわからない。

「再現してやろうか?」

そう言って、前に出て来たのは仁王先輩だった。

「再現…?」

「『月乃先輩〜。英語の宿題わかんねぇんスよー。教えて下さいっス!』」

「それ、俺の声…っ」

「『月乃先輩!今日も俺練習がんばりますから、ちゃんと見てて下さいよー!』」

何だあれ…あれが、俺だってのかよ…?

「『月乃先輩、もうすぐクリスマスっスね!俺、欲しいモノがあるんスけど、それはサンタさんじゃ無理なんスよね〜。今年のプレゼントはぁ…』」

「もういいわ。仁王くん」

俺の物真似をしているらしい仁王先輩を、その人は遮断するかのような声で、止めた。

「プリッ…」

「私の事以外は覚えてるみたいだし、生活に支障は無いでしょう」

「しかし…」

柳生先輩が心配そうに視線を送ってきた。

「このままで、いいと言うのかい…?」

幸村部長はその人に視線を向ける。

「構わないわ」

そう言って、その人は少しだけ俺に近付いた。

「はじめまして、切原君。マネージャーの香宮月乃です。よろしく」

「あ…うぃっス」

何だかわけがわからないまま、俺はそれだけ返した。

周りにいる先輩達の視線が痛い。



何だってんだよ……。







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