也
□待ち合わせ
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「月乃先輩、まだかな…」
待ち合わせ場所に立ち、俺は何度も携帯に目をやった。
液晶画面に映し出される時刻が、さっきから全く進んでいないような気がしている。
落ち着かない。
月乃先輩が時間に遅れる筈はない。
つまりは、俺が早く来過ぎてるんだけど。
昨日から張り切って準備して、もし遅刻したら…とか考えたりしてあんまり眠れなかった。
待ち合わせの時間より30分は早く着いちまった。
「やべぇ。緊張する…」
今までに味わった事が無いくらい。
どうしよう…本当に大丈夫か?俺!
…だって、初めてなんだ。
学校も部活も関係無い。何の口実も無い。
今日俺は、初めて、月乃先輩と正式にデートするんだ…!!
「今日は絶対ぇ俺が奢ろう。じゃなきゃデートじゃねぇし」
月乃先輩はやっぱり“先輩”だから、俺に奢られるのが嫌みたいで、いっつも割り勘か月乃先輩の奢りだった。
いっつもって言ってもデートっつー状況じゃなかったけど。
いつもみたく調子よくしてるとガキ扱いされかねねぇ。今日は大人っぽく、かっこよく…!
ゲーセンはやめとくか。
月乃先輩…、デートなんだし、ちゅーとかしたっていいよな?
…んー、せめて…せめて手は繋ぎてぇな。腕は組んでくれなそうだし。
一緒に買い物とかして…あ、何かプレゼントとかしてぇ。
オソロイのモンとか、月乃先輩好きかな…?
月乃先輩。
俺は傍にあったベンチに座った。
月乃先輩―――
期待と不安と願望と…いろんな思いを巡らせながら、俺はひたすら月乃先輩を想う。
…あぁ
月乃先輩の匂いがする。良い匂い……