也
□呼び方選び
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俺の名前は切原赤也。
立海大附属中の一年生。
テニス部に入部したばかりだ。
そして、このひとの名前は香宮月乃。
立海大附属中の二年生。
テニス部のマネージャーになったばかり。
「先輩」
一年生はみんな、“マネージャーさん”とか“香宮先輩”とか呼ぶ。
でも俺は嫌だった。
他の奴らと一緒じゃ、なんか嫌だ。
「月乃ちゃんと月乃さんと月乃先輩と、どれがいい?」
「…は?」
そのひとは不思議そうに、俺を見て首を傾げた。
「呼び方、どれがいいっスか?」
タメ口がいけなかったのかと思って、一応丁寧に言い直してみた。
「俺的には、“月乃”でもいいんスけどー」
愛想よく話してたつもりだったのに、何故か笑顔は返って来なかった。
「私の方が年上なんだけど」
「それはわかってるっスよ?」
「先輩に呼び捨ては無いと思わない?」
「そうっスね〜。じゃあ“月乃ちゃん”で」
「からかってるの?切原君」
向けられるのは厳しい視線。
あれ?怒ってんのかな?
「じゃあ、“月乃先輩”にするっス」
俺がそう言うと、月乃先輩は嫌とは言わなかった。