也
□甘やかし
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「月乃先輩…」
部活が終わった後、赤也は泣きそうな声で言った。
「俺…もう駄目っス…」
いつもの元気が無い赤也に、月乃は戸惑った表情を見せた。
いくら部活で疲れているとはいえ、こんな弱々しい赤也は見た事がなかった。
「どうしたの?赤也」
ガクリ…と、部室の床に膝をついた赤也。
月乃が心配そうに視線を送ると、赤也が目を合わせてきた。
「俺……俺……腹減ったっス………!」
その意外な答えに、月乃は目を大きくさせた。
しかし、赤也は真剣そのもの。
それに、元気じゃないのは事実だ。
「今朝遅刻寸前で、朝メシ食い損ねたんスよ…だから弁当早弁しちまって…。昼休みに学食行こうと思ったけど金足んなくて、購買で買ったパン一個しか食ってないんスよぉ…」
今にも消え入りそうな声に、月乃はお説教する気も無くしてしまった。
今はただ、目の前のお腹を空かせた小動物をどうにかしてあげなければ…。
「赤也」
もうちょっとだけ我慢出来るだろうか。この生き物は。