□呑気で無邪気な特技
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練習試合の帰り、立海レギュラー達は、駅のホームで電車を待っていた。


アナウンスの後でやって来た電車に、いち早く乗り込もうとする赤也。

が…、

「赤也」

「へっ?!」

背中部分の布地を引っ張られた。

「降りる人が先」

「へーい…」

一応返事をしたが、月乃はジャージを放してはくれなかった。

乗客が降りたと判断した時、月乃の手が離れ、赤也は勢いよく電車に乗り込んだ。

月乃や他のレギュラー達が電車内に入ると、赤也は出入口に一番近い席に座っていた。

「月乃先輩っ!此処空いてるっスよ!」

そう言って、少し横にズレ、扉側の席を示すと、月乃の手を引いて座らせた。

「香宮の席を取りたかったから、急いでたんだね」

「隣に座りたいだけじゃねーの?」

その姿を見て微笑む幸村と、呆れ顔のブン太。赤也の横へ座った。
その横に仁王が座り、他のメンバーは吊り革を掴んだ。

月乃の隣を独占し、ご機嫌な赤也。

電車が発車した。

暫くすると、電車の揺れと、試合の疲れからか、赤也はうとうとし始めた。

「たるんどるぞ赤也!」

「す、すんません!」

前に立つ真田の声に驚き、一度は目を開いたものの、赤也の瞼は再び、重たそうに下がって来た。

「まるで子供だな」

幸村の前に立つ柳が、赤也を見て言った。

こくり、こくりと、赤也の首が動く。

ガクン…

自分の方へ倒れてきそうになった赤也を、ブン太が押し返した。

グラ…

逆側。つまり、月乃の方に倒れる赤也。

「おい、危ねぇっ」

ブン太の前に立つジャッカルが言うと、月乃は赤也の頭を自分の肩へと傾けた。

「………」

やがて、穏やかな寝息が聞こえて来た。




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