赤
□Hurry Up Drive
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ふと、声が聞きたくなって、ゲームのセーブボタンを押し、携帯に手をのばした。
アドレス帳から名前を探し、発信ボタンを押す。
まだ、緊張は消えない。
暫くコールした後、その声が聞こえると、俺の心臓は一層弾んだ。
「もしもし?月乃先輩?」
『赤也…どうしたの?』
「別に用ってワケじゃないんスけど、何となく、月乃先輩何してるかなーって」
出来るだけ、いつもの調子で言う。
『そういう赤也は?また、ゲームしてたの?』
流石は月乃先輩、俺の行動はお見通し。
「へへっ。そうっス。ラスボスがなかなか倒せなくってぇ」
図星をつかれて笑った後、もしかしたら迷惑だったかもという不安が過ぎる。
時計はもう22時を大きく過ぎていた。
「あの…月乃先輩は?もしかして、寝ちゃってました」
『ちょっと…うたた寝しちゃってたみたい。練習メニュー、考えてたんだけど』
「月乃先輩でもそういう事あるんスねぇ」
見たかったな、寝顔。きっと可愛いんだろうなぁ…。
「…月乃先輩?」
少しの沈黙、
『…赤也』
「はい?」
『…』
何か言いたい事があるんだろうか?
「先輩…?」
俺が促そうとすると、月乃先輩が先に喋った。
『ゲーム…するなとは言わないけど、夜更かしも程々にしないとね』
「はァい。朝練遅刻しないようにって言うんでしょ?わかってますよぉ。月乃先輩こそ、あんま無理しちゃダメっスよ?」
『私の事はいいの。早く寝なさい』
マネージャーとしての言葉。相変わらずの子供扱い。
俺はアンタを心配してんのに、何でそうなの…?
「はいはい、わかりましたよ。寝ればいいんでしょっ?おやすみなさい、月乃先輩!」
『おやすみなさい…』
そこまで聞いて、電話を切った。
いつまでもガキだと思うなよ…?
俺にはわかるんだよ、アンタの様子がおかしい事くらい―――!