□Hurry Up Drive
1ページ/2ページ




ふと、声が聞きたくなって、ゲームのセーブボタンを押し、携帯に手をのばした。

アドレス帳から名前を探し、発信ボタンを押す。

まだ、緊張は消えない。

暫くコールした後、その声が聞こえると、俺の心臓は一層弾んだ。

「もしもし?月乃先輩?」

『赤也…どうしたの?』

「別に用ってワケじゃないんスけど、何となく、月乃先輩何してるかなーって」

出来るだけ、いつもの調子で言う。

『そういう赤也は?また、ゲームしてたの?』

流石は月乃先輩、俺の行動はお見通し。

「へへっ。そうっス。ラスボスがなかなか倒せなくってぇ」

図星をつかれて笑った後、もしかしたら迷惑だったかもという不安が過ぎる。
時計はもう22時を大きく過ぎていた。

「あの…月乃先輩は?もしかして、寝ちゃってました」

『ちょっと…うたた寝しちゃってたみたい。練習メニュー、考えてたんだけど』

「月乃先輩でもそういう事あるんスねぇ」

見たかったな、寝顔。きっと可愛いんだろうなぁ…。

「…月乃先輩?」

少しの沈黙、

『…赤也』

「はい?」

『…』

何か言いたい事があるんだろうか?

「先輩…?」

俺が促そうとすると、月乃先輩が先に喋った。

『ゲーム…するなとは言わないけど、夜更かしも程々にしないとね』

「はァい。朝練遅刻しないようにって言うんでしょ?わかってますよぉ。月乃先輩こそ、あんま無理しちゃダメっスよ?」

『私の事はいいの。早く寝なさい』

マネージャーとしての言葉。相変わらずの子供扱い。

俺はアンタを心配してんのに、何でそうなの…?

「はいはい、わかりましたよ。寝ればいいんでしょっ?おやすみなさい、月乃先輩!」

『おやすみなさい…』

そこまで聞いて、電話を切った。





いつまでもガキだと思うなよ…?

俺にはわかるんだよ、アンタの様子がおかしい事くらい―――!







次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ