□QUEENspell
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「クソーッ!絶対ぇ お前ら三人まとめて倒してやるからな!!No.1は俺だぁ!!」

あこがれて入部した、王者立海大附属中テニス部。全国No.1のこの学校で No.1になる!!――という赤也の野望は、脆くも崩れさった。

眼前に立つのは、三人の鬼才(バケモノ)。

コートに這いつくばり、汗だくで、涙まで出てきて……。初めて味わった惨敗、屈辱。
悔しくて、悔しくて、仕方なかった。




赤也は、一心不乱に壁打ちをしていた。
誰のどんな言葉にも、耳を貸す気は無かった。


何で勝てない?
何で負けたんだよ?!
俺はNo.1じゃねぇのかよ!!


ちくしょう―――っ!!


そんな時、届いた、無機質な声。

「力任せに打っても、通用しない。もっと緩急をつけないと」

慰めの言葉でも、馬鹿にした言葉でもない。
無機質だからこそ、今の赤也に届いたのかもしれない。

赤也は壁打ちを止めて振り返った。
フェンスの向こうに、見た事がない女子生徒が立っていた。

「…かんきゅうって何スか?」

「………え?」

整った顔立ち。綺麗な黒髪。そして、抑揚の無い声が、印象的で……まるで、人形のようだと思った。



後日、その女子生徒は、テニス部のマネージャーになった。

香宮 月乃。

この春から立海に編入して来た2年生。

赤也が彼女のアドバイスを聞き入れたのをきっかけに、テニス部にスカウトされたという噂だ。
聞き入れたというよりは、聞き返したのだけれど。

だが、赤也は思っていた。


あの後、俺のテニスが少し変わったのは事実だ。
この人がいれば、俺は強くなれるだろうか…?





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