□Cross-Purpses (完結)
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決して来る事は無いと高を括っていたその日が来た。
例の如くボコボコにされながらも、満面の笑みを湛えて帰って来たあの人真選組局長近藤に不審を覚え
「・・・どうしたんだ?また、あの女に殴られたんだろう、それがそんなに嬉しいのか、アンタ頭やられちまったんじゃねえのかぁ」
「トシ!聞いてくれぇ〜、お妙さんがぁ〜おっ、デート・・・おデートしてくれるってぇ〜!」
「エッ?」
一瞬頭が真っ白になる
「そっ、そりゃぁ良かったなぁ」
と、興味なさそうに懐からタバコの取り出し口に銜える。
不覚にも震える手で火を付ける。
心にも無い言葉を吐いて自分自身を傷つける。
「で、そりゃぁ何時なんだ?」
「今度の日曜日だ」
「そりゃぁ駄目だな」
「なっ、何でだよトシ」
「だって、アンタ今度の日曜日仕事だろうがぁ」
「うっ、忘れてたぁ・・・トシィ〜」
と、縋るよに土方の袖を掴んだ。
「駄目だ、そんな目したって」
「・・・トシィ」
「第一、誰が好き好んで日曜日の仕事代わるってんだ。」
「確か、トシ・・・非番だったよなぁ」
「アンタなぁ〜、自分の仕事忘れてんのに、他人の非番良く覚えてんな」
「ああっ、そりゃなあ、なんたって俺って局長だからな」
と、変な所で胸を張る近藤を睨みながら
「まっ、とにかくあの女に断り入れておくんだな」
と、犬でも追い払う様に近藤に対して手を上げてヒラヒラと振った。
突然、近藤が土方を後から抱き付いて耳元で甘えるように呟いた
「トシィ〜、お前知ってんだろう俺がどれだけお妙さんを想ってるんだかさぁ。やっと、やっとおデートしてくれるって言ってんだぞ。これまでの俺の苦労がやっと報われるんだ。なぁ、トシィ〜。親友じゃなかい、なっ頼むよぉ〜」
「・・・」
「トシィ〜、なっ、仕事代わってくれよぉ〜」
「駄目だ!」
近藤の息が耳元をくすぐる。胸の鼓動が早くなる。
すると、背に感じていた熱が引いて行く。
ハッと、振り返れば近藤が畳に頭を擦らんばかりにして仕事の交代を頼み込んでいる
「たっ、頼む!近藤勲一生の頼みだ。お前は俺の親友なんだろう、俺の幸せを願ってくれるんだろう、だったらサ、なっ、頼むトシィ〜、一生恩に着るからさぁ〜」
親友と言う言葉を繰り返す。その言葉がどれだけ俺にとって残酷な事かアンタは考えた事も無いだろうと思いつつ。
「アンタ、その言葉忘れんなよっ。今回だけだからな」
「本当!うぉぉぉぉぉぉ!やっぱ、持つべき物は親友だよなぁ〜」
と、土方の頭をごしごしを撫でて部屋を出て行ってしまった。
一人残された土方は、深くタバコを吸いながら自分の甘さに呆れた。
「良いんですかィ、あんなこと言っちゃってさァ、あんまり良い顔ばっかりするとその内自分の首を絞める事になりますぜィ」
突然、部屋に入って来た総悟に背を向けたまま。
「何のこったぁ」
と、フーッと煙を吐きながら答えた。
「アンタがしらばっくれるんなら、アッシはなーんにも言いませんがねぇ」
と、総悟特注のアイマスクを額に掛けながら部屋の隅で寝転んだ
「なっ!なに人の部屋で寝転ぶんだぁぁぁ」
「いや、何となくでさぁ、此処にいりゃぁ退屈せずにいられそうですからねぃ」
「なだとぉっっっ、昼寝なんざぁテメエの部屋でしやがれぇっっっ、って言うか総悟オメエ今見回りの時間じゃねぇのかぁ」
「ああ、それなら大丈夫でさぁ、山崎と交換しやしたからねぇ」
「ちっ、山崎の奴、後でシメてやる」
と、一人呟きながら、総悟を追い出す事を諦めまた机に向かった。

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