□ミヤコワスレ(前編) ('09.1.26)
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真選組の門前には真選組と書かれた一対の提灯と、紅白の幕が張られ普段の殺伐とした風景と違って華やかな雰囲気に包まれていた。
そして、次々と黒塗りの車が横付けされ、幕府の要人らしき人物達が門の中へと消えて行った。
「何かあるのか?」
遠巻きにそれを眺める野次馬に、長身の男が尋ねた。
「ああ、今日は真選組の局長が婚礼を挙げるんだってよ、めでぇてぇこったぁ」
「婚礼?」
「何でも、見合いして相手がえれぇ惚れ込みようだってぇ話だぞ」
「・・・」
無言のまま長身の男が門前へと目を遣れば、紋付袴姿に身を固めた真選組局長近藤勲が花嫁を迎えに出て来た。
緊張でガチガチに固まる近藤へ野次馬から一斉に、
「よっ!日本一!局長さん!」
やんやの喝采が贈られた。
近藤は、顔は厳ついが心の優しい男で、街中では誰にも好かれた。
「あっ、花嫁行列だぁ」
一斉に野次馬達の視線が動く。
真選組屯所へと続く道に、花嫁行列が肉眼でも見える距離まで近づいて来ていた。
仲人婦人に手を取られた白無垢姿の花嫁を先頭に、婚礼道具を担いだ人足がそれに続いた。
視界に入って数分後に行列は屯所前へと付いた。
近藤が前に進み出て、挨拶をすると花嫁を屯所の中へと誘った。

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