□Cross-Purpses (完結)
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ガチャ

静まり返ったマンションに響く音
ギギーと唸りながら開く扉
冷え冷えとした外気と同じくらいの冷たい空気が無人だったその部屋の中から流れ出る
手探りで部屋のスイッチを入れると、暗闇だった部屋が一機に明るくなり部屋の主を向かえ入れる。
寝る為にだけ帰ってくる部屋
男一人が生活するのに必要最小限の生活用品が並ぶ部屋
崩れるようにソファーに体を沈め、懐からタバコを出して火をつけ、深く吸い込んで煙を吐き出す。
紫煙を目で追いながら、窓に目を移せばそこには、漆黒の闇に包まれた自分の姿が写っている。
まるで、孤独の中に居る自分を移して居るように思えて、思わず目を逸らす。

この部屋を借りて既に一ヶ月近くになる
あの人が毎晩あの女の所に通って、ボコボコにされて屯所に帰って来る前に屯所を出る
ボコボコにされて帰ってきたあの人の傷に薬を塗りながら、心にも無い慰めの言葉を掛ける。
そんな自分が惨めで毎回自己嫌悪に苛まれていた。
あの人の心があの女によって占められているのは仕方ない事だと自分に言い聞かせていた。
しかし、頭と裏腹に心が壊れて行く。
長年溜め込んでいた想いを吐き出したい気持ちが押さえきれなくなるのが怖い。
気持を伝えたところで応えてもらえる訳でもなく、今の関係まで失ってしまうのが怖いのだ。

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