□★ 春風に乗って ★('08.4.4)
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桜の花びらが舞い落ちる川沿いの道を腕を組んだ一組のカップルがそぞろ歩いている。
水温む川のせせらぎは、キラキラと春の光を浴びて輝き、道の両側では桜の枝に桃色の花を満開にして二人の頭上を飾る。
時々、桜の香りを纏った春風が彼女のスカートの裾を揺らす。
このカップルは新選組局長近藤勲とその彼女トシである。
人も殆ど居ないこの場所は、知る人ぞ知る花見の超穴場。
誰も居ない二人だけの世界。
寄り添って歩くトシの足元で、散った桜の花びらが戯れる。
「綺麗ね」
「ああ、綺麗だ」
トシが白く綺麗な手を差し出せば、ハラハラとその手に花びらが落ちる。
フッと花びらをその可愛らしい唇で吹けば、近藤の目の前でヒラヒラと舞い落ちる。
川べりに降りてシートを広げ、トシ手作りの弁当を開く。
「勲さんの好きな卵焼きもあるのよ」
そのしなやかな指で綺麗に箸を操り、トシは重箱の卵焼きをはさみ近藤の口元へと運ぶ。
近藤の口の中に仄かな甘みがひろがる。
「美味い」
近藤は幸せそうな笑顔をトシに向ける。
近藤の顔を見てトシの頬が桜色に染まる。
近藤が重箱の海苔巻きをトシの口元に運ぶ。
一瞬驚いた顔をしたトシだが、はにかみながら海苔巻きを口にするが大きすぎて近藤の指先に半分残る。
パクッ近藤は自然に残りの海苔巻きを自分の口に放り込む。
「いっ、勲さん」
「美味いな」
恥ずかしそうに俯くトシに近藤は満面の笑みで応える。
魔法瓶からお茶を注ぎ、猫舌の近藤の為にフーッフーッと一生懸命に吹いて冷ますトシの姿を近藤は目を細めて見守る。
「はい、お茶」
両手で大事そうにコップを包んで差し出すトシ。
近藤はその両手を自分の両手で包んで、そのままコップを口に運ぶ。
近藤の唇にトシの指が触れる。
一瞬トシはみじろぐが、近藤はその手を離さない。
そして、トシの手の中からコップを取り出し、再びトシの両手を自分の両手で包み自分の唇へと誘う。
愛おしそうにその手に口付けをして、
「トシ、愛してるよ」
「勲さん」
一層頬を染めて俯くトシの顎に、近藤は手を添えて上げさせる。
トシは近藤の愛の言葉の嬉しさに瞳を潤ませ、近藤の目を見詰める。
その唇は薄っすらと開かれ、近藤の口付けを待っている。
静かに近藤の顔が迫りその柔らかい唇に触れる。
近藤はトシの反応を確認するかのように、数回優しくその唇に触れる。
瞳を閉じたトシは甘い吐息を放つ。
誰も居ないという事が二人を大胆にする。
近藤は、先ほどの啄ばむような口付けに濡れたトシの唇に深く口付ける。
列歯を割って咥内に舌を差し込むと、トシの舌が待ち焦がれたように絡み付く。
角度を変えて何回も何回も深い口付けを繰り返す。
「ふっ」
トシの口から甘い吐息が漏れた。
その声に近藤は我に返った。
名残惜しそうにその唇を離すと、トシが近藤の胸に凭れて来て、
「勲さん、帰りましょ」
近藤の胸に顔を埋めたままトシが呟く。
近藤はトシの意図を瞬時に理解すると、カーッと自分の顔が赤く染まるのを感じた。
「そっ、そうだな」
二人は桜吹雪の中を寄り添うように、家路についた。


「沖田さん、花見は何時しますかぁ、局長に聞いてません?」
「なんでぇ、何も聞いてねぇぜ」
「そうですかぁ、変だなぁ」
「いってぇどうしたんでぇ」
山崎は近藤に、花見をする場所を探すように命令されていた。
そして、それには幾つかの条件があった。
山崎は総悟にその条件の書かれたメモを見せた、すると、
「山崎ぃ、こりゃぁ真選組でやる花見じゃねぇぜぇ」
「えっ、だって・・・局長が・・・」
「良く見てみねぇ、その条件じゃ全員では無理・・・、そりゃぁ二人で行くつもりじゃねぇの」
馬鹿馬鹿しいと、総悟はメモをクシャクシャと丸めてゴミ箱に入れてしまった。
「おっ、沖田さん」
山崎は慌ててゴミ箱からメモを取り出し、皺を丁寧に伸ばした。
そのメモに書かれていた条件とは、

 @見事な桜並木であること
 A余り人に知られていない穴場
 B人家など無い静かな場所
 C屯所から片道1時間程度
  注:極秘事項とし他言無用、報告は直接近藤へ

         以上


 END


★昼間っからラブラブで大胆な二人・・・如何でしたか(^^♪
 相変わらず、山崎は被害者です。(笑)

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