□★一日遅れのホワイトデー '08.3.15★
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電車の心地良い振動が伝わる。
近藤の肩に凭れて静かに寝息を立ているのは愛しい人。
バレンタインのお返しに何が欲しい聞いた。
愛しい人は、ほんのりと頬を染めて、
『ちょっとでも良いから、誰も知らない所で貴方と二人きりで過ごしたい』
俯いて呟く愛しい人。
近藤は小さな海辺にある、小さな貸し別荘を選んだ。
『一日遅れのホワイトデーだけど』
愛しい人の手を取って誘った。
『嬉しい』
愛しい人は、近藤に抱きつきその細い体いっぱいで嬉しさを表した。
近藤も愛しい人を抱き締め幸せを感じる。


少しでも二人きりで居たいと、電車の個室を取った。
二人で向かい合って座った。
彼女は、はにかみながら近藤に最高の笑みを向けた。
二人きりの時間は楽しい。
他愛もない話で時を過ごした。
電車が走り出して暫くすると、
「ごめんなさい」
その小さな紅い唇から謝罪の言葉がでた。
「うん、どうした」
近藤は、膝の上に置かれた彼女の両手にその手を重ね、俯く顔を覗き込む。
長く黒い睫毛に縁取られた瞼が伏せられている。
近藤はその細い顎に手をやり、顔を上げる。
「だって・・・勲さん。忙しいのに私の我が儘で・・・ごめんなさ」
再び謝罪する彼女に
「心配するな。休みは沢山あるんだ。それに、俺はいつもお前と一緒に居たいからな」
優しく言葉をかけニッコリと微笑む、そして彼女の唇にそっと自分の唇で触れた。
「勲さん」
安心したかのように彼女は、フッと笑った。
愛しい人の柔らかな微笑みは近藤を幸福感の絶頂へといざなう。
いつしか二人は並んで座り、流れ行く車窓の景色を眺めている。
近藤の膝には彼女の手が置かれ、その手を近藤の無骨で大きな手が包んでいる。
近藤は彼女の肩を抱き、その体を引き寄せた。
彼女はそのまま近藤に体を預けた。
近藤の深い愛情に守られて彼女は眠りに落ちて行った。


貸し別荘からはプライベートビーチの白い砂浜と青い海が広がっている。
海水浴にはまだまだ早い季節。
誰も居ない砂浜。
誰も居ない世界。
愛する二人だけの世界。
誰にも邪魔される事無く二人は愛を育む。
逞しい近藤の腕に、彼女の細い腕を絡ませて歩く砂浜。
彼女の艶やかな黒髪が海風になびく。
「あっ」
足元から何かを拾いそれを空にかざす。
彼女の指先には紅く小さな貝殻。
「綺麗」
「ああ、綺麗だ」
瞳を輝かせて貝を見る彼女の横顔を見て近藤も呟く。
「クシュン」
「大丈夫か」
近藤は自分のコートの中に彼女を招き入れる。
二人は寄り添って浜辺に腰を下ろす。
お互いの体温を感じなが、無言で海を眺めていた。
いつしか日は落ちて、辺りは漆黒の闇に覆われたかと思ったとたん、満天の夜空に無数の星が輝き出した。
一筋の線を引きながら星が流れた。
「あっ、流れ星」
彼女はそう言うと、慌てて両手を合わせ何かを祈った。
「何を祈ったんだ」
近藤が尋ねれば
「うふふ、秘密よ」
幸せそうに微笑み、彼女は近藤の胸に顔を埋めた。


近藤の部屋を掃除していた山崎は、机の下から一片の紙切れを見つけた。
クシャクシャになった紙切れを摘みあげれば。
「なっ、なんだこれ・・・」
「おう、どうしたんでぇ」
「沖田さん・・・これ」
通り掛かった総悟に山崎は呆れた顔で、紙切れを渡した。
「はっ!アホらしい」
と総悟は又紙をクシャクシャに丸めてゴミ箱に投げいれた。
紙切れには
   
   夫 近藤勲 妻 トシ子

と近藤の手でびっしりと書かれて居た。

   END



 ★近藤さんは、トシタンとラブラブお泊りです。
  近藤さんは宿帳の練習してたんですねぇ〜
  今頃の海・・・寒いでしょうねぇ
  二人の愛は熱々で寒さなんかへっちゃら・・・です(*^_^*)

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