□★二人のバレンタイン・デー('08.2.14)
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2月だというのにまだまだ冷たい風が吹く街角のカフェショップの窓際に一組のカップルが座っている。
男はガッシリとした体格で、黒いスーツをビシッと着こなしているが、鍛え抜かれた体躯がスーツの上からも想像できる。
一方、女の方はスラッとした体にラメを織り込んだキラキラと輝く真っ白なパンタロン・スーツが良く似合っている。
その襟元からは春らしい薄ピンクのレースのブラウスが覗いている。
艶やかなロングの黒髪にクルクルと綺麗にカールが施され、動きに合わせて髪先が軽やかに揺れる。
通りに面した窓際のテーブルに、向かい合って座りお互いの顔を見つめ合いながら話しをする二人は、映画の一場面から飛び出して来たかのような美男美女のカップル。
全面ガラス張りのカフェショップ。
行き交う人達は自然と、このカップルに目を奪われる。
外を通る人だけではなく、カフェショップの客達も二人に気を取られる。
そんな、周りの目に二人が気づく事もなく、其処は二人だけの世界だ。


「ハイ、これ」
白くしなやかな指でバックから取り出した小さな箱。
真赤なリボンで飾られたその箱には、彼女の手作りのチョコが入っている。
「俺・・に?」
小さなテーブルの上にちょこんと置かれた小箱を嬉しそうな顔で見やる近藤。
「ええ、昨日作ってみたの。レシピ通りに作ったけど・・・どうかしら?」
薄っすらと頬を染めて微笑む彼女。
手作りと聞いて尚一層顔の筋肉を緩める近藤。
どれどれと真赤なリボンの両端を、その無骨な指で摘み引っ張ると、綺麗に結ばれたリボンがハラリと解ける。
ピンクのハート柄が散りばめられた包装紙を破れば、中にはカードが入っていた。
近藤がそのカードを取り上げると、
「あっ、近藤さん。そのカード・・・今は読まないで」
恥ずかしいからと真赤になって俯く彼女に
「良いだろう。今、読みたい」
近藤が言うと、
「だって」
尚一層俯く彼女を見ながら、近藤はカードを開く。
『愛する、勲さんへ
几帳面で流れるような文字がカードの上にある。
ニヤッとする近藤に、キャッと両手で顔を覆う彼女。
「ありがとな」
近藤は声をかけて、
  ・・・愛してる・・・
口の動きだけで彼女に愛を告げると、紅く小さな唇の両端が僅かに上がり優しい瞳が近藤の顔を見ていた。
彼女の細い指が箱の中から一粒のチョコを取り出し、近藤の口元に持って行く。
フッと笑って近藤はそのチョコを口にいれる、それを見届けた彼女の指が戻る時、近藤はその手を捕まえその甲に自分の唇を当てる。
「勲さん」
小さく愛する人の名をその唇に乗せて呟けば、店の中には二人の世界を演出するかのように甘いラブソングが流れた。



「ううっ」
「山崎ィ、何、泣いてんでぇい」
自室の障子を開け放ったまま、腕で涙を拭っている山崎に総悟が声を掛けた。
手には、なにか入っていたのであろう空き箱をぶら下げて、
「隊長ーーっ、俺の一番大事な・・・変装用のウィッグがぁ・・・無くなってるんですぅーー」
「へぇーっ、それって、もしかしてロングでカールのかかってるやつかぃ?」
障子の縁に両腕を組んだ総悟が尋ねると
「そっ、そうですぅぅぅぅ、一番お気に入りなんです。綺麗な黒髪なんです」
「そりゃぁ、いつもの二人だぜぃ、さっき手を繋いでルンルンで出掛けたからねぃ」
昼寝用のアイマスクを掛けながらズルズルと腰を落とし、昼寝の体制に入った。
「ええって、又、あの二人ですかぁ〜・・・って、隊長なんでそこで昼寝なんですかぁ〜」
総悟に抗議する山崎を尻目に、
「気にすんな」
「気にしますよぉ〜」
隊長ぉぉぉ、山崎の昼寝でも爆睡する総悟を揺り起こそうとする声だけが屯所中に響き渡っていた。

  END



★しょーも無くラブラブな二人です。
 ここの近藤さんは、逞しく凛々しい素敵な男性ですから(笑)
トシタンの女装用品はザキの仕事用を拝借です・・・体系が合うのかって、合ってしまうのが妄想の世界なんですぅ(^O^)/

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