□★Prayer of Lovers★('08.1.4)
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「凄い人だな」
年も改まった朝、近藤は彼女をつれて初詣に出かけた。
紋付袴姿の近藤と、紺地に御所車の華やかな模様が染め上げらられた着物に真っ白な羽毛のショールの彼女。
日本髪に結い上げた髪には、銀細工の簪。
新年の清々しい朝日を受けてキラキラと輝く
二人は肩を並べて神社に向かった。
神社の階段を登ろうとした時、人の波に押され二人は離れそうになる。
「あっ、近藤さん」
彼女のか細い声が近藤に助けを求めた。
離れてしまった彼女の手を近藤が一瞬で捕まえた。
近藤は二人の間に入った人を掻き分け、力強く彼女を引き寄せる。
「大丈夫か?」
思わず彼女の肩に手を回し、自分の胸に包みこんだ。
彼女はほんのりと頬を染めて近藤の胸に顔を寄せて人混みを進んで行く。
近藤の胸に顔を寄せると、近藤の心臓の音がその逞しい胸を伝わり彼女の耳に届く。
その音に気持を集中させている彼女は他の音は全く聞こえず、近藤の心臓の音だけで安心する。
キラキラと輝く簪を眺めながら、近藤も彼女の温もりが心地良く伝わり心安らぐ。
人波に押されながら神殿の前まで来ると、彼女が懐から縮緬で作られた紅い財布をだす。
根付に付けられた小さな鈴がチリチリと鳴る。
その白く細い指先で財布から50円玉を取り出すと
「ハイ」
と近藤に渡す。
「おっ、ありがとう」
自然に受取、賽銭箱に投げ入れる。
それを横で微笑みながら見て、チリチリ鈴の鳴る財布から小銭を出して賽銭箱に投げ入れる。
真選組の繁栄と、隊士全員の安全を祈願する近藤は両手を合わせて祈る。
そして、いつも傍で自分を見守ってくれてる彼女との幸せを祈る。
ふと横に目を遣れば、端正な横顔の彼女が一生懸命その綺麗な手を合わせて祈っている。
近藤の視線に気づいた彼女は、振り向いてニッコリと微笑む。
その花の綻ぶ様な綺麗な微笑み釣られて近藤もニッコリ笑い返す。
「何、祈ったんだ」
「秘密よ」
ホホホと笑って階段を下りて行こうとする。
慌てて彼女を追う近藤に、振り返って手を差し出す彼女。
その手を取って、また彼女を自分に引き寄せて胸に包み込み。
「さっ、帰ろうか。今夜は姫始めだな」
と彼女の耳元で囁く。
「ばっ、バカ」
彼女は真っ赤になって近藤の胸を叩いた。
「アハハハ」
近藤は豪快に笑いながら寄り添って神社を後にした。


「隊長、あの二人、今日非番でしたぁ?」
神社の警備にあたっていた山崎が沖田に聞いた。
「あー、勤務の割り振りはあの土方の野郎がやってんだ、どーにでもならぁ〜」
忌々しいという顔して二人を見送る。
「まったく、一番忙しいってゆーのによぉ。山崎ィィィィ!休憩でもすっかぁ」




  END

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