□君と僕との”ハロウィン"
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おっ、トシが見回りから帰って来たみたいだなぁ。
「それじゃぁ、俺は近藤さんに報告するから、そっちの方は明日聞く」
「ハイ、判りました」
俺よりも少しトーンが高く、ちょっとハスキーなトシの声が聞こえた。
今の顔は眉間に皺を寄せ、瞳孔全開の”副長”の顔なんだろうなぁ。
女みてぇに綺麗な顔だが、キリッと引き締まった顔付きは男にも女にもモテル。
「近藤さん、居るか」
「おお」
”副長”の声でトシが俺の名を呼ぶ。
俺も普通に答える・・・すると、スーッと障子が開け放たれると其処には”副長”の顔をした十四郎が立っている。
「立ってないで、入れよ」
俺が促すと、十四郎は後ろ手に障子を閉めた。
「近藤さぁぁぁぁん、ただいまぁぁぁ」
閉めたと同時にトシが声を上げて俺に抱きつく。
「おっ・・・」
いつもの事ながら余りの勢いに胡坐をかいている俺は後ろに倒れそうになった。
「トシ、見回りご苦労さんだったなぁ」
抱きついたまま、俺の胸に顔を埋めていた十四郎の顔が静かに上がると、子猫みたいなクリクリと輝く瞳が俺を見ている。
ドキッ・・・毎度の事なのだから慣れてもよさそうなのだが、俺の胸はその瞳に高鳴る。
「うん、近藤さん。ハロウィンって知ってる」
「ハロウィン・・・ああ、あのお化けの格好とかする西洋のお祭りだろう」
なんでも、ハロウィンってのは10月31日に霊魂があの世から戻って来るが、その時悪霊なんかも一緒に戻って来るので皆仮装をして取り憑かれ無いようにするらしい、いわゆる日本でのお盆ってぇとこかな。
「ハロウィンがどうしたんだ」
俺の胡坐の中にすっぽりと入ったままの十四郎は、ニッコリと笑って
「なぁ、俺達もハロウィンしようぜ」
「はぁ??」
「なぁ、良いだろう」
俺を見上げるトシの瞳はおねだりモードで、クリクリとした瞳が尚一層輝いている。

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