復活

□ごちそう【山本side】
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ごちそう【山本side】






「雲雀いるー?」


部活が終わって真っ先に向かったのは泣く子も黙る風紀委員長がいるはずの応接室。ノックをするのも面倒で、そのまま部屋のドアを開けると、中には誰もいなかった。
とりあえず明かりをつけてみたら、机の上が随分散らかっていた。
まだ仕事する気なんだろうか。風紀委員ってやることいっぱいあって大変だなぁなんて、机の上に乗ってた本を1冊手にとってみた。



『楽しい鳥の飼い方(初級編)』



「……」


雲雀ってこんなの読むのな。あー…よく見たら、仕事の書類ってあんまりないかも。
…案外暇なのな、雲雀。


部屋の主が来るまで自分も暇なので、手に取った本をパラパラ眺めてみた。

別に、会うことを約束したわけじゃないし、暇ならさっさと帰れば良いんだろうけど、俺が菓子を持って行くと雲雀が少し戸惑ったような顔をして大人しくそれを食べてくれるから、何だか可愛くて仕方ない。
初めて会った時、いきなり殴りかかってきた雲雀が少しずつ心を開いてきてくれてるみたいでなんか嬉しい。



「…ペットを飼うってこんな感じなのかなー」



なんて雲雀相手に思ったのがいけなかったのか。
待ちくたびれた俺はいつの間にかソファーで寝ていたらしく、帰ってきた雲雀に鎖骨の辺りを噛まれて跳び起きるはめとなった。



「っ〜!!痛いのな雲雀!!」



視線を上げると、珍しく楽しそうに笑みを浮かべる雲雀と目があった。


「ここで寝ていた君が悪いよ」



うわぁ…なんか目がギラギラしてる…。
可愛いペットはどこにいったのか、雲雀は野性の猛獣と化していた。



「っ…雲雀がなかなか帰ってこなかったから……あっ!!」


鞄の中に本日のおやつをいれていたことを思い出した俺は、慌てて鞄からそれを取り出した。


「今日のおやつは甘栗なのな!」


これでどうだ雲雀!!


案の定というか何と言うか雲雀は呆れたと言わんばかりの表情をしたが、急に笑みを深めて


「今日は、そんなものより君が食べたいな」


え……あれ?


「…アハハ…それは痛いから嫌なのなー」


まさか雲雀がこんな風に返してくるなんて思ってもみなくて咄嗟にとぼけてみたけど、内心ドキドキ心臓バクバクで相当テンパってて、その隙に雲雀はさっさと俺の上にのしかかって来てしまった。
もしかして俺ピンチ…?



「草食動物は草食動物らしく大人しく食われなよ」
「……ぁっ…」


血の滴る傷口をちゅっと音をたてて吸われたら、体に電流みたいなものが走って、何だか本当に草食動物になった気分で。
雲雀のごっこ遊びはいつもリアルでドキドキする。





「ん…、優しくしてくれるならいいぜ」





もう腹括るしかないか。

どうせ雲雀は一度捕まえた獲物逃がす気ねーんだろ?

けれど、大人しく食われるのは釈だから、噛み付いてきた雲雀の背中に爪をたててみるのも悪くないかもしれない。



「…ねぇ、何笑ってんの?余裕あるならもっと酷くするよ」
「ちょっ………雲っ!?」
「とりあえず黙りなよ」




強引に視線を合わされ本当に噛み付くように唇を奪われた。





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