草紙(長)

□孤絶な桜の声を聴け―漆―
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「昌浩殿」

頼まれた書物を届けた帰り、渡り廊下を歩いていた昌浩は敏次に呼び止められた。

「?何か用ですか?敏次殿」
「あぁ、君も昨夜の夜警に参加していたわけだし、一応報せておこうと思ってね・・・・・・・・」
「―――?」
「あの後、頭にことのあらましを説明したところ、晴明様にご助力願おうということになってね・・・・・・・・これが詳細が書かれた文だ。晴明様に渡しておいて貰えるかい?」

結局面倒ごとはすべて晴明様に、ってか?んな些末な問題ぐらい自分達で解決しろよな!!
と、物の怪が顔を顰めつつ、胡乱気に敏次を睨みつける。
はっ!と鼻で哂いつつ、大体なぁ・・・・・と切り出して棘をふんだんに盛り込んだ言葉を投げつける。(もちろん、聞こえないのは承知の上である)
昌浩はそんな物の怪を視界の端で眺めつつ、内心で溜息を吐いた。

どうやら血染め桜の件は晴明に押し付け譲渡するらしい・・・・・。

じい様も大変だなぁと思うと同時に、「そうわけじゃから昌浩や、ちと行って払ってこい」みたいないつも通りの展開になってしまったら、結局は自身が何とかしなければいけなくなる。
それも何か嫌だなぁと思う。(十中八九そうなるだろう・・・・)

そんな考えに至った昌浩は、ほんの僅かに頬を引き攣らせる。

「・・・・・えぇ、わかりました。じい様に渡しておきます」

なんとか笑みを取り繕って、昌浩は敏次から文を受け取ったのだった。



 
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