草紙(長)

□孤絶な桜の声を聴け―碌―
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邸に帰り着いた昌浩達は、一応先ほどの出来事を晴明に報告した。(でないときっと嫌味をつらつらと言われてしまう)
そして今は昌浩の自室にいた。

「――――くっそ〜!あのくそ爺!!なぁっっにが『昌浩や、いくら六合の長布で顔を隠したからといってそうほいほいと人前にでるとは、軽率にも程がある。術で姿を眩ませるなり何なりもっと上手く立ち回ることができるじゃろうに・・・・・あぁっ!これもじい様の教え方が悪かったからかのぅ?じい様は遣る瀬無い、沈痛の思いじゃ・・・・・』だっ!んな人離れした技なんか使えるかぁ――っっ!!!」
「いや、やればできると思うぞ?・・・じゃなくって、少し落ち着け昌浩」
「できないって!あ〜、本当に腹が立つ!!もっと標準を考えて物言えってーの!!」

(それをお前が言っちゃぁ―お仕舞いだな・・・・・・)

なんせ彼の普通基準が一流の陰陽師なのだ。
そして彼が目指すのは最高峰の陰陽師。つまりは現段階で超一流の陰陽師である祖父の晴明がそれにあたる。
そんな中、凡庸な者達の基準で物を言っていても話しにならないのだ。

故に晴明もそれなりに高度なものを、昌浩に要求してくる。
が、普通の者から見たのならば、やはりかなり高技術になる。先程昌浩が叫んでいたように、人離れ扱いになること請け合いだ。

「とにかく、もう夜も遅い。早く寝ないと明日起きれないぞぉ〜?いいのかぁ?寝坊なんかしてみろ、それこそ晴明にちくちくちくちくと嫌味を言われ続けるぞ?」
「それは嫌!」
「だったらさっさと寝るんだな。彰子が起こしに来た時に寝汚いお前の姿を曝す気か?ん?」
「なっ!誰が寝汚いって?!それはもっくんのことだろ!?毎度毎度人の上で寝やがって!今度乗ってみろ、ただじゃおかないからな!!!」
「なにおぅ?!臨むところだ!!」



こうして安倍邸の一角は賑やかに更けていったのである。





 
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