草紙(長)
□水鏡に響く鎮魂歌―壱―
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大切な家族。
自分に残された、たった一人の弟。
唯一無二で自分の光だったもの。
その弟の突然の死。
自分は嘆き、悲しみ、怒り狂った。
復讐してやる。
顔も名も知らぬ相手に吐き続ける呪いの言葉。
大切な家族を失ってから月日は流れる。
自分は我武者羅に復讐の相手が誰なのか、探し、調べた。
そして自分から弟を奪った者が誰かわかった。
安倍 晴明
それが憎き敵の名。
そして、陰陽師として最高峰に位置する者の名。
それを知った自分は、すぐに復讐をすることをやめた。
しかし、諦めたわけではない。
長い年月を掛け、確実に復讐できる方法を考え出すためだ。
復讐するのは本人だけでは気が済まない。
復讐するなら相手の大切な者達にも。
苦しめばいい。
嘆けばいい。
そして自分から弟を奪ったことを後悔すればいい・・・・・・・・。
―――――さあ、禍々しく、それでいて苛烈な曲を奏でよう。
復讐という禍唄を乗せて・・・・・・・・・・・
そして復讐という昏い〔くらい〕鎖に囚われた男は闇に落ちていく。
妖しく、禍々しい存在が潜む闇に――――――――