草紙(長)
□孤絶な桜の声を聴け―漆―
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薄紅から紅へ。
じわじわとその色を変えていく花弁。
あと少し・・・・・・・。
あと少しで自分の役目が終わるのだ。
輝く月が完全な形を取り戻す今日が峠。
抑えきるのだ、不浄を。
守りきるのだ、この庭を。
疎まれていた自分に名をくれた幼子。
彼の子の外の世界がこの庭だけだと言うのなら、己の全てを賭けて守り抜こうと心に誓った。
「あなたの名前は<けいおう>ね―――!」
幼子が、そしてこの庭に訪れるものがいなくなってから久しい。
しかしその桜は孤独の中でも生き続ける。
秘めた誓いだけを糧に――――――。