草紙(長)

□孤絶な桜の声を聴け―肆―
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「あ、六合おかえり〜。様子はどうだった?」

周囲の偵察から戻ってきた六合に気づき、昌浩は視線を邸から背後に顕現した六合へと移す。
昌浩の足元にいる物の怪も、視線だけ六合へと向ける。

六合はそんな二人に、軽く頷いて返す。

「この周囲近辺に怪しいものはいなかった。特に問題はないだろう」
「そっか、ならいいんだ。・・・・・ところで六合、俺を抱えて邸の屋根に上ってくれる?」
「―――?騰蛇は・・・・・・」

状況報告の終えた六合に、昌浩は屋根の上に運んでくれるように頼む。
頼まれた六合はというと、昌浩の言葉に疑問を感じて微かに首を傾げる。
物の怪とて元の姿に戻れば、いくらでも昌浩を屋根の上に運ぶことができるだろう。

六合の疑問に答えたのは、首を横に振って否やと告げた物の怪。

「俺は無理だ。元の姿に戻ったら神気の押さえが利かない。そうしたら流石のあいつ等だって気がつくだろう?」
「なるほど・・・・・・わかった」

物の怪の言葉を聞いた六合は、なるほどと納得する。
そうとわかれば、六合が異を唱えることもない。

六合は昌浩を抱えると、桜の木と敏次達の様子が見えやすい位置に上った。




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