草紙(長)
□水鏡に響く鎮魂歌―肆―
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「大丈夫?昌浩」
「うん、大丈夫。天一が傷を治してくれたしね・・・・・・」
心配そうに見つめてくる彰子に昌浩は努めて笑顔で返した。
しかし、いくら傷が治っていようとそれは外見だけで、実際は完治しているわけではない。
昌浩自身が天一にそう頼んだのだ。
天一の術は相手の怪我を自身にそのまま移すもの、いくら死に至らずとも怪我には変わりないので上辺だけ治して貰い、後は自力で治すことにしたのだ。
「なーにーが大丈夫よ!完治しているわけじゃないんだから、大人しく寝てなさいよ!!」
「うむ。我も太陰の意見に賛成だ。いらぬ無理をしていては治るものも治らない」
「そうよ昌浩。だから起きてないでせめて横になって?」
珍しく正論を言ってくる太陰に、玄武・彰子も賛同する。
壁に背を預けて静観している六合もさり気なく頷いて肯定している。
「・・・・・・わかりました;;」
皆から言われてしまえば逆らうこともできず、昌浩は大人しく横になった。
やはり疲れていたのか、昌浩は軽く息を吐き全身から力を抜く。
心なしか顔色が悪いように見える。
「少し寝た方がいい」
「うん、そうするよ」
六合の言葉に昌浩は僅かに苦笑しながら返事をし、静かに目を閉じた。
そしてしばらくした後、静かな寝息が昌浩を見守っていた四人の耳に届く。