ゆめみぐさ

□愛されているあなただもの
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スクアーロが何時も以上の大声で叫び散らし、レヴィはさめざめ泣き続け、ルッスーリアはあらあらまぁまぁなんて自分のことのように嬉しそうにに頬を緩めて、ボスはベルフェゴールを一度だけ殴ったりして。(マーモンとモスカは普段とあんまり変わり無かった気がする)
一連の動騒、嵐の後で私は分娩室へと運ばれる。何だかんだ云ったって、結局は皆おめでとうって云ってくれて、ボスは産休を認めてくれて、終いには勝手に皆で名前を如何しようかなんて話し出した。(良かったね、顔すら誰にも未だ知られて居ないのに、あなたはちゃんと愛されてるよ)(祝福、されてるんだ)
今までに無い疼痛に顔をしかめて呻いた私の手をベルフェゴールが握る。何時もより余裕の無い笑顔を口元に乗せたまま、矢っ張り彼は大丈夫だから、と云った。そうね、どんな子だって貴方の子なら無事に生まれてくるわ、どんな子だって確かに私は愛すよ。
分娩室に運ばれるまでの短い間、ベルフェゴールの手の温もりを感じながら、もう記憶に無い母を想った。白いお腹の中の真っ赤な血潮、母胎を埋め尽くす私の肉体と、確かな母親となったひとの温もりと、同時にアルバムの写真を散らかすように日常にちりばめられた愛情を。
大丈夫よ。強くベルフェゴールの手を握り返して、はっきりとお腹の中のいのちへ言い聞かせるように私は呟く。其れ等に負けない程の愛が此処にはあるわ、だから安心して生まれておいで。



(――嗚呼、)




胎動の、音がする。







( )







20080308

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