ゆめみぐさ

□大人と子供の境目
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ぐるぐると渦巻く気怠さの中、遠くから足音が近付いてくるのを頭の片隅で聞いた。其れが誰のものであるかなんて、考える必要は無かった。

「入るぜ、具合悪いんだって?」

「・・・ベルフェゴール」

ぱたん、と彼の後ろ手に扉が重い音を立てて閉まった。彼の金糸の向こうの瞳と視線が重なる、子供とも大人ともつかぬ顔立ち。そう、私達は何もかもが曖昧で中途半端だ。でももう駄目ね、私達は見据えなくちゃならない。例えば今居る此の部屋のような白くて清潔で優しいふたりだけの密室から、幼い愛が生み出すふたりきりの世界から、窓の外に広がる世界を。真実も世界も、ガラスの向こうの碧落にあるのだ。

まだ寝てろって。然う云う彼の言葉を無視して私はシーツに預けて居た背中を起こした。頭痛も吐き気も一向に退かないけれど頭は妙に冴えて居る。


「ベルフェゴール、聞いてくれる?」






(背伸びをすれば、大人になれるなんてね)


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