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□王都陥落
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5、国王の窮地に


主君の首が切り離されるのをスローモーションの様に見ながら、シャンディガフは呻きにも似た悲痛に喘いでいた。
最早立ち上がる事の出来ない体の両の手足で必死にもがき、いかに親しい者が戦場で散ろうとも、平常心を貫いてきた宿将シャンディガフは、始めて戦場で涙を流した。
戦に破れ、主君を殺され、何故に儂は生きておる。
王都を奪われ民が蹂躪され何故にまだ息をしておる。
「殺せ!」
先陣に立ち戦っていた自分が、仲間を殺され主君を失っても生きている事が滑稽に思えて仕方がなかった。
武人にとってこれ程の恥はない。
せめて死後の楽園モナハンまでの道程を共にする事が臣下としての務めだ。
もがくのを止め、仰向けに寝たシャンディガフは、ライネルを見上げて睨み付けた。
獣にも似た視線を受け流すライネルは、コーラルの首を足の爪先で小突いた。
まだ滴る血が爪先に残ったのを見ると、嫌悪の表情で顔をしかめる。
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