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□王都陥落
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T、『アルドール・ラハイナ』


ラハイナ王国とマンデライド王国との国境、シルフィア川の下流に位置するアブデゥーグ領の地を、点々と赤黒い血が染め上げ、それを覆う様に魂を失った人骸が横たわっている。
ラハイナ王国王弟、アルドール・ラハイナは、圧倒的勝利に酔いしれることなく敗走するマンデライド軍を見送っている。
「一体何時までこの様な不毛な小競り合いを続けるつもりか」
アルドールの隣に立つ、齢二十三を数える彼の副官アイゼン・ハワーは、百八十センチを超える逞しい筋肉を誇るアルドールを見上げた。
「大陸図において東に分布するミスル教は、ルピシエ教を支持するアルタミラ帝国と敵対し、その中にあって、我が国は唯一西に残ったミスル教。マンデライド王国にしてみれば、我が国との戦闘行為、それ自体がアルタミラ帝国への友好の証としているのでは?」
国力として大差のないマンデライド王国とラハイナ王国は、互いに友好な関係とは言えない。
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