水菓子たち
□後朝〜きぬぎぬ〜
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ふと、目を醒ますと蝉の声が聞こえた。
切り開かれた夜の帳の向こうに水浅葱(みずあさぎ)色の空が見える。
昨夜閉め忘れた襖から朝の光が射している。
……憎たらしい光。
今、俺を抱き眠るコイツがくれた優しい接吻も抱擁も、意味のわからねぇ、「まいはにぃ」とかいう異国語も
…愛してるの言葉も約束さえも
この光が全部溶かしていくような気がした。
日が昇れば、帰らなければ、ならない。
せめて今だけはコイツの香りを抱き締めて、
コイツの存在だけは溶かされないよう、
強くしがみついた。